ペルソナ人気ゲームのタイトルにもなっている言葉ですので、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ユングの提唱した概念で、”社会的影響が自己の精神世界に侵入し不安定化すること”を防ぐために必要な心的機能(心理学辞典より)のことを指します。日本語では仮面と訳されます。

「よそ向きのストーリーを語れることが健康である証拠である」

授業中に臨床心理士でもある教授がそうおっしゃっていました。人は現実社会で生きていくために、場面に応じて様々なペルソナを付け替え、その場にふさわしい自分を演じています。「面接で志望動機を聞かれ、本音ではないストーリーを語った」「本当は独創が好きだけど、周囲との仲を保つために協調性のある自分を演じる」「過去に見た素晴らしいプレゼンターのイメージを纏って壇上で喋る」など、例を出したら枚挙にいとまがありません。

「本当の自分じゃない気がして嫌だ」と感じることもありますよね。その感じも健康である証拠です。では、本当の自分ってどんな自分なのでしょう。ジョハリの窓理論で言えば、他人にも自分にも分かっていない自分すらいるのです。素の自分、演じている自分、それ以外の自分もすべてまとめて全部自分なのではないでしょうか。その仮面をつけると決めて行動したのは自分の意思なのですから。

環境に適応するために行うこの営みに対して違和感が大きくなり、他人に決められて行動している感じを覚えたり、少し日常生活に支障をきたすレベルになるなら、ぜひ心理相談室へお越しください。息苦しさや生きづらさを緩和し、あなたらしい適応方法を探るお手伝いはできるのではないかと思っています。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。