心理学での「原因帰属」とは、出来事や行動の原因を推測し、因果的な解釈を行うことを指します。様々な帰属理論は、認知や推論の個人差や歪みを明らかにするための視点のひとつとして、日々の生活に役立っています。
例えば、花瓶を落として割ってしまった時、私たちはその原因を「自己の不注意のため」「手を滑らせてしまったため」「誰かから突然声をかけられたため」「運が悪かったため」などと考えます。この原因を推測することが帰属です。ハイダーの理論で言えば、「自己の不注意のため」と「手を滑らせてしまったため」は内的帰属(端的に言えば自分が悪い)、「誰かから突然声をかけられたため」と「運が悪かったため」は外的帰属(周囲が悪い)となります。
「教育」の場面で、学習意欲を高める方略として帰属理論が用いられます。ワイナーの理論を取り上げましょう。
彼は課題遂行における成功や失敗に関して、「能力」や「努力」などの内的帰属と、「課題の困難度」や「運」などの外的帰属を仮定し、帰属は達成意欲に対する本人のパーソナリティが影響するとしています。
達成欲求の高い人は、成功や失敗を試す課題として、できるかできないかわからない、「中程度の難易度のもの」を選びやすいと言っています。それによって、結果が努力や能力などの内的要因に帰属されやすくなり、達成欲求が促進され、ますますやる気を持って課題に取り組むようになります。
対して達成欲求の低い人は、自分の実力を試されるような課題を避け、「難易度が高すぎる課題や逆に低すぎる課題」を選ぶ傾向にあります。難易度が高すぎる課題に失敗しても「いや、課題が難しすぎたから」「今回は運が悪かったんだ」と外的帰属しやすく、低すぎる課題に成功してもそれが努力や能力などの内的帰属には向きにくく、どちらの場合も次へのやる気には繋がりにくくなるのです。
学習意欲の低い人に対しては、中程度と低程度の間くらいの難易度課題を用意します。成功と失敗を経験させ、その度に「なぜ今は成功して、さっきは失敗したのだろうね」「少し練習してから、もう一問やってみようか」「練習したら解けるようになるね」と、寄り添いながら内的帰属に向かう指導を行い、強化していくのです。
対象は子どもにとどまりませんが、いずれにせよ根気のいるやり方で、必ずしも成功するとは限りませんが、試してみる価値はあると思います。