自分の関心事だけを矢継ぎ早に話すクライエントさんのケース報告があり、翻弄される担当セラピストに教授がアドバイスを贈りました。

「彼のモノローグにばかり反応しているので、今後はダイアローグできる部分に着目して対話していきましょう。」

モノローグとは、ひとりで独立した台詞のこと。独語やひとりごとでもいいでしょう。この場面では彼の関心事、つまり表面的な話題を指しています。ダイアローグとは対話を意味します。二者の共通のテーマ、つまり彼の抱える心理的苦悩についてベクトルをあわせていこうということです。

多くの人は最初から自ら進んでバツの悪い話はしません。自分自身を直視するのは大変な仕事です。防衛機制が働くのはある意味で健康的な反応です。セラピストはそれを了解しなが、対話によってクライエントの自己実現傾向の発揮を援助するのです。

話はそれますが、教授の言葉で思い出されたのは、数年前にビジネス研修で参加した、ダイアローグ・ジャパン・ソサエティが運営する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」プログラム。暗闇を媒介にするとてもユニークなプログラムで、コミュニケーションの原点と本質を体感的に学びました。

あとは、秦基博さんの楽曲「ダイアローグ・モノローグ」ですね。歌詞をみると、独りで己と対話したシーンなのだとわかります。この方は日常ありきたりの言葉で少し浮いた現実を描く天才だと思います。2013年NHK「SONGS」で「」を拝聴して以来、虜です。ほぼ毎日彼の美声に癒されながら赤坂へ通学しています。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。