入院必須の古典的森田療法だけでは現代社会の時流に適合しない。療法家の新訳への取り組みに感動しました。森田療法はマインドフルネスや禅宗との関わりが深く、仏教的考え方が通用する日本では特に有効な技法です。例えば「こだわり」は強すぎると適応力を奪いますが、粘り強く生き抜く力でもあります。このように物事を片側面ではなく多角的に捉えることが「あるがまま」に繋がるのです。

「はじめての森田療法」北西憲二著

森田療法の原理は「あるがままに生きる」

悩む人はこだわりとらわれる人です。ですが、その根っこには粘り強く生きる力があるのです。悩む人は迷う人でもあります。過去を後悔し、先を憂い、今ここで生きていることを忘れがちです。

人は悩むと、まず原因は何だろう、としばしば原因を探します。そして多くは、過去の人間関係、出来事にそれを求めます。しかし私たちの苦悩は単に一つの原因に還元できるほど単純ではありません。

古来の治療システムが何らかの技術的、理論的変更もなしに、現代人のメンタルヘルスに働きかけられるでしょうか。原理を大切にしつつも積極的な読み替えによるチューニングが必要です。(一部意訳)

治ることは、決して固定的ではありません。人生のライフサイクルにも依ります。常に流動的です。

マインドフルネスの思想も含めた、もっと大きな知が森田療法です。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。