産業領域の臨床現場で活躍する特任教授が、社会人マナーについて講義してくださいました。
「挨拶ができない臨床心理士が多すぎる。」
開口一番におっしゃったのがコレです。嘆かわしい事ですが、心理職が働く医療・福祉・教育・産業・司法すべての領域の方々からそう言われているようです。20代半ばの新人が社会人経験をもたずにひとり職場で働き始める。社会常識がないのはある程度仕方ないことかもしれませんが、挨拶はできますよね、人として。しない理由が「コミュニケーションが苦手」では心理職は務まりませんし、「私は院卒の専門職で偉いのよ。みんなが私を敬いなさい」なんて勘違いであれば残念極まりません。
回顧すると、私は仕事ができない新人でした。自分の頭で考えず、行動量が少ない。それは失敗することで根拠のない自信を崩されるのが怖かったからです。営業職だったのですが、もちろん結果など出るわけがなく、初受注は同期の中で一番遅かったです。社会は甘くなかった。できない自分を受け入れ、やれることはなんでもやると決め、最初に実行したのは「皆に聴こえる音量で感じよく挨拶すること」でした。デキる先輩の真似をしたのです。それまでも挨拶はしていましたが、意識と質を変えました。その結果、声をかけてくれる同僚が増え、取引先にも顔を覚えてもらえ、よい軌道循環に乗ることができました。挨拶がマイナスに作用したことは、今まで一度もありません。
挨拶の語源は「一挨一拶(いちあいいちさつ)」という禅宗の問答です。「挨」には心を開いて近づく、「拶」にも近づくという意味があります。人間関係を扱う臨床心理士は、誰よりも挨拶を大切にしないといけないのです。