8〜9月は通常講義がないため、学外実習に時間が当てられています。先日は近県にある精神科病院で、外来診察の陪席、入院病棟の見学、デイケアへの参加を通じて、統合失調症のリアルを感じてきました。統合失調症やうつ病などの精神障害を抱える患者数は、2011年57万人から2016年84万人へと増加の一途をたどっています。
統合失調症は、妄想や幻覚(特に幻聴が多い)などの陽性反応、意欲喪失や感情の平板化などの陰性症状、解体した会話や行動などの解体症状の3つを主な症状とする精神障害です。古くは精神分裂病と呼ばれていました。罹患率は1%(100人に一人はかかる)と言われており、決して希少病理ではありません。発症の原因は解明されていませんが、脳内神経伝達物質のドパミンが過剰放出されていることは判明しており、これを抑える抗精神薬による薬物療法と認知行動療法などの心理療法との双方からの支援が有効とされています。
意識障害はなく、意識と知的能力は通常保たれているのに、考想奪取(考えが抜き取られる)や考想伝播(自分の考えが世の中に筒抜けになってしまう)など、”内界の体験が外界の体験になる”という、なんともたまったもんじゃない状況に陥ってしまうのです。
実習先では、様々な病状水準の統合失調症患者さんをお見かけしました。外来でこられる方は、医師との言葉を介してのコミュニケーションは問題ありません。入院されている方は、意思疎通できる方もいれば、体をくねらせベッドに横たわったままの方もいらっしゃいました。社会復帰には安定した生活リズムの獲得が必要ですが、専門スタッフのサポートを受けながら一人暮らしができる自立訓練施設も内覧させていただき、数名の入所されている方と挨拶を交わしました。
今回の実習で感銘を受けたのは、医師・看護師・臨床心理士・精神保健福祉士・作業療法士などの専門職員や運営スタッフみなさんが、色々な苦悩を生きている患者さんに対し、精神病人ではなくいち生活人として敬意を持って接していた姿勢です。赤子をあやすような口調で話しかける人は皆無でした。統合失調症の患者さんは、相手が舐めた口をきいているのか、対等に話してくれているか、瞬時に判別します。基本的人権を尊重されながら治療に専念できる環境が効果に及ぼす影響は大きいでしょう。業務にあたる心構えや使命感を学びました。