臨床現場では対話を中心とした対人支援を行います。伝える技術や伝わる構えを自分の中に備えなければなりません。いかに情報の内容が素晴らしくても、伝え方次第でいかようにもなってしまうことを、過去のTEDを題材に解説するもんだから、面白いし説得力が半端ないです。
新鮮さこそ、優れたトークの魅力である。僕らは人間だ。使い古しは好きじゃない。前にどこかで聞いたことのあるトークは心に残らない。手垢のついたフレーズや、誰かのパクリは絶対に聞きたくない。だから、この本のアドバイスを、ひとつの型にはめるためのツールだと思ってほしくない。逆に、変化を生むためのツールだと思ってほしい。あなたの仕事を、なにか価値のあることを、あなたにしかできないやり方で語ってほしい。
「スピーチの長さによる。10分のスピーチなら準備にまる2週間かかる。30分なら1週間。いくらでもしゃべっていいなら、準備はいらない、今すぐできる。」-第28代アメリカ大統領ウィルソンがスピーチの準備にどのくらい時間がかかるかと質問を受けて
はじめに、聴衆についてできる限りの情報を集めよう。相手は誰なのか。どれくらいの知識があるのか。何を期待しているのか。何を気にかけているのか。過去の講演者は何を話したか。受け入れる準備のある人にしかアイデアは届かない。
信頼を生み出す最高の武器は、笑顔だ。時々、温かい笑顔を挟みながら顧客と目を合わせると、トークの受けが大きく変わる。舞台に上がったら、あわててトークを始めてはいけない。何人かを選び、その目を見つめ、迎え入れるようにうなずき、笑いかける。そうすれば準備万端だ。
暗記はいいことだ。大ヒットも夢じゃない。でも絶対に「不気味の谷」を超えてほしい。そこに留まってはいけない。その強い意志がないのなら、暗記はやめたほうがいい。
トークを暗記してもしなくても、はじめと終わりが肝心だ。出だしの1分で、話を聞きたいと思わせないといけない。そして最後に何を言うかが、いちばん記憶に残る。その間のトークはどんな風に話してもいいけど、つかみの1分と締めの言葉は原稿に書き出して暗記することを強くおすすめする。それが、緊張せずに自信を持って話し、インパクトを残すためのコツだ。
最初は10秒の戦いだ。ステージに現れた瞬間に、トピックへの布石を敷きながら観客の注意を引きつける。次は1分の戦いだ。引きつけた注意を使って、観客を説得して確実に旅に連れ出す。
出だしの言葉で間違えたりつっかえたりしても、「ごめんなさい、ちょっと緊張しているんです」と言っていい。「ご覧の通り、人前で話すのにあまり慣れていないんです。でもこのチャンスは逃したくないと思ってやってきました」と言えば、観客はもっとあなたを応援したくなるだろう。
そして、これがいちばん大切なことだ。トークの方法ばかり気にして、もっと重要なことを忘れないでほしい。つまり、あなたらしいやり方で話すことだ。なによりも大切なのは、講演者が自然に自信を持ってふるまい、情熱を持つトピックに集中してトークができるということだ。