あけましておめでとうございます。2019年はどんな年になるでしょうか。個人的には大学院修士2年生になります(なる予定です笑)。修了のための単位はほぼ取れそうなので、修論研究と実習と練習を充実させて、心理屋として世に出る準備を粛々と進める年にしようと思っています。

公的な意味では、2019年は日本における心理職初の国家資格「公認心理師」が実働し始める年となります。医療領域では保険点数に関わる重大なことであり、教育・福祉・司法・産業の領域での活躍も期待されていることから、日本における心理屋の役割や意義がガラリと変わる元年になるはずです。

一方で有象無象の公認心理師が誕生したことによる実力淘汰が開始されます。10年後は本物だけが活躍する世界になっているでしょう。

語弊を恐れずに言うと、臨床心理士(民間資格/文科省)は個人に対するアセスメントと心理療法等を用いた支援を軸に置いており、公認心理師(国家資格/厚労省)は個人もさることながら、地域や多職種間での連携やコンサルテーションを主に行うイメージを持っています。大は小を兼ねると言いますが、この場合に限っては臨床心理士をできない人は公認心理師もできないんじゃないかなと思っています。

国家資格という枠が定まると、その中でやろうとしがちになる。はみ出さないと発展がなくなる。人や社会は足早に移ろうのに、自分はそこに留まりたくなる。これが怖い。公認心理師でも臨床心理士でも同じなんでしょうけど、臨床現場で時流を感じながら目の前のクライエントに真摯に向き合い自己研磨し続けることだけが、人の役に立つ心理屋への真道だと考えています。時間はかかるだろうけど、愚直にやるだけですね。

世相で言えば、人々はストレスやうつうつしい気分との付き合い方を変えなければならないフェーズに突入してきていると感じます。

自殺者数は近年減少傾向です。年間3万人を超えていたのが今は2.1万人です。これは素晴らしいことです。一方で精神病患者数は増加の一途をたどっています。平均寿命が延びて認知症患者が増えているのである程度は仕方がないのですが、うつ病患者も右肩上がりです。

高度成長期の一義的な価値観は崩壊し、今は多義的な個性の時期であり、数年後にはまたニュアンスの違うムーブメントが巻き起こっているでしょう。時代の遷り変わりのスピードは年々増しています。現代社会を生き抜くにはこの流れに対応していかねばなりません。自分の軸を確立しつつもしなやかに揺らせるアジリティを強化すべきです。これから先の高齢社会、年金問題、労働力低下などを考えると、人生を例えば65歳までとそれ以降で分断する考えは古く、生涯を通してよく学びよく働きよく遊ぶ途切れない生き方が必要でしょう。これをしんどいと思うか死ぬまでやれて愉しいと思うかが、分かれ目なのかなと思います。

今年のマイキーワードをひとつ挙げるなら「しなやかさ」ですね。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。