総論 YES で、使い方次第では NO なのかな、と思うのです。
生命保険の更新期が近づき、既存と新規、複数の方々からお話を伺う中で、この人からなら買えるなと思える営業とそうでない営業がいることを改めて感じています。自分の営業時代を省みつつ、違いをつくるその要素は何なのだろうと、完全なる私の嗜好と偏見で考えてみました。
・顧客が自分で決断するというゴールに向かって伴走的な援助をする
・自社商品の可能性と限界を知っている
・デリカシーがある
・コミットして、やりきる
構えが先にあるべき
心理学関係ないところから始まりますが、個人的な経験で言うと、27歳の時に受講したリクルートマネジメントソリューションズの研修「FOCUSⅡ」と「STAR」が、私の営業の概念を激変させました。顧客「に」商品を売りつける仕事から、顧客「が」自らの意思で購買していく過程をサポートする仕事へ。助詞の「に」と「が」の違い、すなわち主役は誰かということです。長年続けている趣味のサッカーでも私はストライカーというよりパサータイプなので、このスタンスには目からうろこが落ちました。
自分が売っている商品に魅了されながらも距離を取って説明できる営業は信頼できます。商品の良さはその限界を知らなければ語れません。また、自分の言動が他者や周囲へどのような影響を及ぼす可能性があるかを気にかけている営業にも好感を覚えます。そういう人は顧客宅の椅子の上に、自分のカバンを直置きしたりはしないのです。
やりきる姿勢を持つ人は、目つきとエネルギーの質が違う気がします。そうした姿勢は、目標設定→達成シナリオの検討→コミットメント→実行→結果を受け入れる→振り返り→次の目標設定のサイクルを回さない限り生まれません。前職のリクルートではこれを3ヶ月タームで行っていました。この会社で優秀な人材が育つ理由の一つなのでしょう。
自分が顧客だったらどんな営業から買いたいか。それは万人に当てはまるのか。外れてしまう人にはどうアプローチするのか。説得するのか、納得させるのか。相手を変えるのか、自分が変わるのか。正解なんて一生出ないけど、今の自分なりの解を問い続ける構えが大事なのだと思います。
構えがあってはじめて心理学が活きる
本屋のビジネス書籍コーナーやネットサイトでは、心理学を応用した営業テクニックが数多く紹介されています。ドアインザフェイス、フットインザドア、プライミング、初頭効果、ハロー効果、単純接触効果、ミラーリング、開かれた閉ざされた質問など、枚挙にいとまがありません。
確かにこれら行動心理学や社会心理学の理論は、優位な商談進行や印象操作に一役買うテクニックに成り得ます。しかし誰がどのタイミングで使うかが重要で、上記のような構えがある人が、最後の味付け程度に用いるのが最も効果的だと思います。技術だけの人もしくは技術が先にくる人は、上っ面だけの薄っぺらい印象を持たれがちです。策士策に溺れるのです。
心理学を営業に取り入れるなら、「傾聴」から
一方で、人の話を聴く(傾聴)という臨床心理学の基盤理論は、人間理解、ひいては構えのクリエイトに大いに役立ちます。心理学のテクニックとしてはすごく地味だけど、これから始めたほうがいい。34歳の時に通った産業カウンセラー養成講座での傾聴ロープレが、その後の仕事にどれだけの好影響を与えたことか。サッカーの名言で「止めて、蹴る。簡単なことが実は一番難しい(カルロス・パチャメ)」というのがあるんですけど、臨床心理学で言えば、「人の話を聴く。簡単なことが一番難しい」ということでしょう。やるほどにその奥深さがわかってきます。
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さて、多方面から話を聞いて知識が増えてきた生命保険については、この先の15年くらいを想定して、もう少し家族で考えることにします。