ACT(アクト)は、認知行動療法の第三世代に位置付けられる、心理的柔軟さを目指す心理療法です。不快な気分に対しオープンでいることや、過剰反応せずに逃げないことなど、マインドフルネスや森田療法に近い信念を持っています。現代社会を生きるために、メタ認知を育む、あるがままに受け止める、効果的な行動をとることの重要性を再認識させられます。

「幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門」ラス・ハリス著 岩下慶一訳

ACTはAcceptance and Commitment Therapyの略だが、A=accept 思考と感情を受容する、C=connect 自分の価値とつながる、T=take effective action 効果的な行動をする、と理解してもいい。

マインドフルネスは、意図的に行う意識のプロセスである。思考のプロセスではなく、気づきのプロセスである。私たちの意識を現在に向けることである。つまり「今・ここ」で起こっていること注意を向けさせる。ACTはマインドフルネスが土台となったセラピーである。

人生で価値あるものは、喜ばしい感情と不快の感情の両方を伴ってくる。

解決しようという試みが問題を作り出している。

思考や感情をコントロールする力はごく弱く、それらを自分が望むようにはできない。だが、行動に対してはかなりコントロールできる。私たちは行動を起こすことにより、豊かで満ち足りた、意味ある人生を創造できる。

脱フュージョンの目的は、思考を取り除くことではなく、それを単なる言葉の羅列として、あるがままに見ることであり、それに抵抗することなくあるがままにしておくことなのだ。

呼吸法は友好的な手法だが、感情のコントロール戦略として使い、リラックスを目的として行わないこと。現在を感じ、今いる場所、していることとのつながりを感じることを目的とする。

自尊心とは事実ではなく、ひとつの意見に過ぎない。自尊心が高ければより良い人生になる訳ではない。自分を証明しようとしないことだ。自分が優れた人間だと考えようとすることをやめよう。ありのままを受け入れ、解き放とう。

死の収容場でもっとも長く生き延びた人々は、肉体的に健康的な人々ではなく、自分が価値を置くものとつながっている人々であった。価値とは目標の奥側に位置するものである。もしあなたが目標に注目する人生を送るなら、何を得ようと十分ではないだろう。だが価値に注目すればそうはならない。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。