修士課程の学位論文研究を進めています。23歳で書いた私の大学卒論はほぼ文献引用の構成で、お世辞にも研究論文とはいえない代物でした。恥ずかしながら大学院に来て初めて「研究とは何か」を考えるようになりました。
広辞苑によれば「研究とは、よく調べ考えて真理をきわめること。」とあります。市川(2006)は「研究」を「勉強」と対比させながら定義しています。すなわち勉強とは、すでに蓄積されている情報を自らの知識とすること、いわば「知識の吸収」である。一方、研究とは、自ら追求して何らかの結論を得ることであり「知識の生産」である、と。
以前勤務していたリクルートでは国内旅行メディアに携わっていたのですが、営業に行った取引先の旅館のご主人に「知恵と知識の違いって何だと思う?」と質問されたことを思い出しました。市川先生がおっしゃっているのは、これに近いことかもしれません。
研究を開始するにあたってまず行うことは、研究計画書の作成です。設計図をつくるのです。その中でも一番重要で一番大変なのが、研究テーマ決めだと、私は思っています。
良い研究テーマとは、やはり自分が興味ある事柄についてのものでしょう。自分の経験や関心ごとであれば、それについて様々なことを想像しやすいですし、研究を持続するモチベーションにもなります。
ただし、「興味がある」だけでは研究にはなりません。なぜ?を繰り返し唱えて、心理学的な仮説を明確化する必要があります。この作業を一人で行うには相当な熟練を要します。大学院受験には願書とともに研究計画書の提出が課せられますが、私の場合は河合塾KALSで講師に指導してもらわなかったらつくれなかったと思います。独特な言い回しや書き方があります。研究慣れするまでは、教員や先輩などに手伝ってもらうことをお勧めします。
仮説立案と同時に考えなければいけないことがもう3つあります。研究の社会的意義と、研究協力者への倫理的配慮と、先行研究調査です。
「面白そうだからこの研究をやる」ではダメで、自分の研究が学問としての心理学の発展にどう寄与し、どのような臨床実践に結びつき、どんな人たちの助けになるのかを言えなければなりません。役に立つものでなければ、研究する意味がないのです。
また、研究に協力していただく方々に及ぼす影響も考える必要があります。例えば死に直面して整理がついていない人に対して「死についてどう考えますか?」などの質問はできませんし、ダマして不利益を与える可能性のある調査などは絶対に行ってはいけません。
自分が考えたテーマでも、すでに誰かが研究して明らかにしていることがあります。関連するキーワードから先行研究を調べていきます。CiNiiなんてサイトがあるなんて知らなかったです。海外の文献も調べないといけません。
ね。テーマを決めるだけも、結構、大変なんですよ。
私の場合は、院試用に考えた研究計画をベースにして、夏までにテーマ及び尺度や分析方法を固めました。今は倫理申請の準備を行っています。来春には質問紙調査を開始して、夏までには分析と考察まで終えていたい。修士2年のスケジュールが少しずつみえてきたので、今年は実習と研究を充実させようと考えています。
臨床心理士に課せられる4つの役割は、査定・面接・地域援助・研究です。臨床心理学とは、心的問題を抱える人々への援助の実践と、実践のための技法・理論の研究であることを、修士研究を通じて実感しております。