2018年12月に屋号を取得しました。従業員ではなく自営業者として仕事をしていく理由と、屋号に込めた想いについて整理してみます。
なぜ個人事業主なのか
語弊を恐れずに言うならば、既存の心理職ポストに就くだけでは儲からないことと、まずは自分の身の丈でマルチに市場開拓していきたいからです。
日本の新米臨床心理士の平均年収は241.4万円です(厚生労働省賃金統計調査)。この金額、どう思いますか?例えば英国では、古くから心理職の重要性が国家レベルで認められており、専門技術を有する心理職は大学教員よりも高給取りだったりします。翻って本国では、やっと心理の国家資格が出来上がったばかり。2008年よりスクールカウンセラーの全公立学校への配置が始まり、心理職の認知度は徐々に高まりつつあるものの、一般的には「心理職って何?人の心とか読めちゃうの?」という水準です。非常勤で低給、これが現状なのです。
心理支援の仕事は支援者側が安定している事が重要で、安定とは情緒や自我だけではなく、経済面も含むと考えます。安定がセラピストの力量を上げ、クライエントへの更なる支援を可能にし、より大きな社会貢献に繋がるのです。今の日本で心理職として私が思い描く収入を得るには、既存のポストに納まるだけでは足りなくて、自ら市場を興していく必要があります。
ここから数年のうちに、開業もしたいし、高齢者同士のピアサポートグループ団体も設立したいし、地域包括ケアシステムに心理職で参入もしたい。やりたいことは沢山あります。有言実行の枷として、まずは屋号を取得するに至りました。法人成りとかはタイミング次第でしょうかね。
そうは言いつつ私も大学院修了後には、腕を磨くために、どこかの機関の心理職ポストにお世話になるつもりです。最初から全部を自前で行うには厳しいものがあります。自分でやる部分とお世話になる部分の割合を変えながら、キャリアを積んでいきます。
屋号に込めた想い
「cocoro no cacari(ココロノカカリ)」と命名しました。
最もインスパイアされたのは、ミーハーにもアーティスト「いきものがかり」でして、言葉から想起される理科室の異空間感とか、生死の学びの原点とかが、彼女らの楽曲の雰囲気と相まっていいなと思ったんです。で、人の心を扱う仕事というときに「こころの係」という言葉がポンと出てきました。ちなみにスペルをKではなくCにしたのは、文字の背の高さが揃うと可愛いというだけの理由です。
ロゴはリクルート関西じゃらん時代の盟友・妙加谷 修久氏に手掛けてもらいました。(現在、彼が寄稿している ぐるたび の記事ページはこちら)
ずいぶん昔の話ですが、私達があるクライエントから「予算□円でブランディング目的の広告をうちたい」と依頼された時、彼は全て切り口の違う3案をつくってくれました。先方に提案すると「全部ステキだから全部やりたい。お金は□円×3本分を支払う」と言わせた凄腕エディターです(おかげ様でその月の予算は達成できました笑)。彼に携わってもらったロゴを見るたびに、よし俺も頑張ろうと踏ん張れる気がしています。
大元のモチーフは青銅鏡です。学問としての心理学は19世紀から始まりますが、人のこころの問題はシャーマンの時代から脈づいているものだと思っていて、それを色と形と中央の鏡で表現してもらいました。外枠の重なり合うハートは現代社会における多様性を表し、また、人々の様々な心理的困難を、様々な心理支援の形で関わっていく姿勢を表現しています。
屋号を持ち、ロゴを持ったことで、今までと見える景色が変わった気がしています。もちろん錯覚です。でもいいんです。すべては思い込みから始まるものです。背筋を伸ばし、形だけではなく中身を伴った、名に恥じない仕事をしていこうと思っています。