被虐待経験と発達障害をもつ子どもが、共同生活と学校を通じて回復・成長していく施設で、今回は心理より福祉寄りの立場で3泊4日の実習に入り、子どもの暮らしに混じりながら関係性をつくる経験をさせて頂きました。
男子フロアと女子フロアをそれぞれ2日間ずつ担当し、まずは雰囲気の違いに驚きました。人数差や学年構成も関係していますが、さしずめ女子は共同生活やシェアハウス、男子は運動部の合宿所といったところ。賑やかでした。
賑やか、といえば微笑ましいですが、漂う雰囲気は不安定甚だしい。感情のコントロール不全からちょっとの言い争いでかんしゃくを起こす子ども、発達障害により他者の気持ちを考えて行動することが困難な子ども。たった4日間の実習でも、小競り合いやケンカは後を絶えません。
休憩時間に事務室で管理している個人のケースファイルを閲覧させてもらったところ、過去の記録には、むしろ小競り合いで収まっているのが不思議なくらいのことが報告されていました。私の中で、今の目の前にいる子どもの印象と、その子が過去に起こしたトラブルや迷惑行動などが、どうも結びつきません。投薬治療や経年による発達の影響もあるのでしょうが、職員さんが創るこの施設の環境が、彼らの社会適応性を高めているのだろうと想像しました。
可能な範囲でかつ必要最低限の集団行動を取れることは、社会で生活していくうえでとても重要なことです。悪いことをしたら謝る、相手が謝ってきたら許す、イライラしたら自分でクールダウンする、トラブルが起きたら中止する、連帯責任を負うなど、施設で共同生活するためのルールが自然な形で徹底されています。
ルール運用の要である職員さん達の姿が自然体なのがいい。みなさんとっても素敵でした。自分らしさをもって子どもに対峙し、手を加えすぎない指導を心がける。手を加えすぎないって難しいじゃないですか。背中を見せる部分と、自分で考えさせる部分を、意図的に使い分けていました。子どもは自分で考えて行動し責任をとることを学び、社会で生きていくための自分なりのやり方を身につけていきます。
ケースファイルには心理検査の結果が挟み込まれていました。心理職として関わる場合、検査技術は専門性を定義する上でとても重要なことだと再認しました。子どもの場合はWISC(ウィスク)や田中ビネー式、HTPテストやバウムテストあたりですね。あとは、観察記録。行動観察から記録をとるのは重要な仕事です。その子の状態などを観察から掴む力も磨いていかねばと、身が引き締まりました。
心理検査に関してはある教授の「子どもをとれないひとは大人もとれない」という言葉が胸に残っています。子どもであろうがひとりの人間です。子どもの権利条約に謳われている「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」を念頭に、尊厳をもって関わっていきたいと思いました。