実際に自分が心理面接を行い心理検査をとるようになり、部屋の設えやセラピストの関与の仕方が、クライエントへ及ぼす影響について考えさせられています。
部屋の設えでいうと、例えば椅子の向き。セラピストとクライエントが真向かいに座るのか、90度の角度で座るのか。たかが椅子の位置くらいとお思いかもしれませんが、実は多くの人は、真正面は敵意、斜めは控えめな好意と捉えます。また心理検査の場面で、セラピストが早口で教示するのか、ゆっくり穏やかに語りかけるのかによっても、クライエントの解答は高確率で変わるのです。
部屋の設えやセラピストの関与の仕方に、絶対的な正解はありません。クライエントによって変えなければいけないし、同じクライエントでも昨日と今日とでは一日分の経験値が積み重ねられた別人と考えるべきなので、昨日の正解が今日の正解にはならないのです。
新行動主義者のウッドワースが唱えたS-O-R(Stimulus-Organism-Response)という考え方。彼は行動主義におけるS刺激-R反応という定式の間にO生活体を挿入しました。ある刺激に対してどのような反応が生じるかは、生活体の状態によって変化する、つまり「行動主義はS-Rで人間を理解しようとするが、刺激に対する人間の反応はそんな単純なものではない」と反証しました。
S-Rで片付けられたらどんなに楽だろう。いかに人間が複雑で繊細な生き物かを思い知る毎日を過ごしています。