「サッカーうまい人は、カウンセリングもうまい。」
“えっ、どういうこと?”同年代の新任教授が何を指してそう言っているのか、最初はよくわからなかった。
「構造化されている認知行動療法では、全セッションのうち今はどこら辺にいて、クライエントの状態はどんな感じで、この後どうなっていきそうかを見立てながら心理面接を進めていくわけで、ほら、サッカーに似てない?」
つまり置き換えれば、90分という試合時間の中で、今の時間帯は攻めるのか守りに比重を置いた方がいいのか思案したり、マッチアップしている相手は何を考えてプレーしているだろうかと想像したり、この後ピッチ上に流れてくる展開を読んだりする、ということだ。
会社員時代、メンバー育成の観点で監督業と管理職を重ねて考えたり、個人で戦えない者はチームでも戦えない、などのサッカーの名言を”職場でも同じだな”と感じたりはしてたけど、いやはや、サッカーと心理面接とは。監督じゃなくてフィールドプレーヤー視点で比喩しているところが臨床っぽい。
スタンフォード・ブリッジにほど近いクリニックで、本場英国の認知行動療法を永く行なってきた教授の着想が、とても面白い。