「医療はメスで切って縫合するけど、心理は言葉で切って言葉で縫っていく。」

いつかのグループ・スーパービジョンでこんなことを言われてから、言葉で切ること、言葉で縫うこと、について考えさせられている。

ここでもまた言葉だ。どうやら心理屋にとって言葉は切っても切れない存在らしい。

「言葉」の語源は諸説あるようだけど、「言(こと)」と「端(は)」の複合語だとする説が自分にはしっくりくる。古くは「言」と言っていたが、のちに「言」は「事(=事実)」の意味を含むようになり、そこで事実を伴わない口先だけの軽い意味をもたせようとして「端」を付けて「ことば」になったという。

「君はボソッと厳しい言葉を浴びせるよね笑」と、今までに複数の友人から言われてきた。私は昔から、その場にそぐう「言」と「端」のギリギリの確度の言葉を発したいと思っているのだが、高い技術がないとそれは単なる言葉の暴力になる。未熟でごめんって思ってる。でもやっぱりそこは狙っていきたいんだ。

セラピストに求められる4つの力を考えてみた。切る縫うの前後にも、身につけなければいけない力がある。

・切る場所やそこにある何かを、見立てる力
・切る力
・縫う力
・経過をみて、次の展開を見立てて、進行する力

「見立てる力」と「進行する力」は毎週のケース検討会で養ってきた(まだ全然できないけど)。「切る力」はさじ加減を会得できれば可能かもしれない。問題は「縫う力」で、これが今の自分に足りない大きな課題である。

切る段階で縫い口を想定していないといけない。それと縫い方の習得。イメージはある。信頼できる教授陣の庇護があるうちに、できる経験は積み倒しておきたい。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。