日本で生涯にがんで死亡する確率は、男性25%(4人に1人)、女性15%(7人に1人)という世界になってきました(国立がん研究センター)。高齢になる程がん罹患リスクは高まるので、平均寿命が伸び続けているなかで当然の数値ではあるんですけどね。がんについての正しい知識(生活習慣による予防法、定期検査による早期発見と早期治療の大原則、終末期の状態は痛くて苦しい人もいればそうでない人もいるなど)を、皆が我が事として学んでおく必要に迫られています。

昨年から履修している「未来がん医療プロフェッショナル養成プラン(文科省事業)」の一環として、付属の大学病院を舞台にした実践実習に参加してきました。高齢者医療、在宅緩和ケア、地域包括ケアシステム領域での仕事を志す私にとって、座学ではないチーム医療に関われる貴重な時間となりました。

今回のメインテーマは、がん症例に対する各専門職の切り口を活かしたチームアプローチです。医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、栄養士、放射線技師、言語聴覚士、心理士などの多職種でチームを組み、患者により質の高い治療やケアを提供するために、どの事象に対し、どのタイミングで、どのようなアクションをとるのか、またその際には他メンバーとどのような連携をとるのか等を議論しました。メンバーの中には外国籍の方もおり、幅も深さもある多様な視点に驚嘆の連続でした。

研修中、先生方から頂く心理士への役割期待を感じていました。現在のチーム医療では心理職の明確なポジションが確立していませんが、精神心理のプロの必要性を臨床現場にいるみなさんは感じているそうです。心理は国家資格である公認心理師が誕生し、医療保険点数などの制度とも絡みやすくなった今、どう食い込み、どう成果を積み上げていくかを真剣に考えています。

セッションを通じての一番の気づきは、医師も看護師も人間なんだということでした。チーム医療において重要かつ中心的な役割を担ってきた彼らの本音を聞く機会なんて今までなかったので、「医師の本分であるメディカルな部分に集中させてほしい」「看護師は多くを担える分、逆にアイデンティティが揺らぐ。私はスーパーマンでもヒーローでもない」という吐露に、はっとさせられました。強い人間なんていない、役割というロールをまとっている中身はただの人間なんだ、と。心理職という専門性を活かした相互理解とリーダーシップの発揮を決意しました。

実習ではTVドラマでしか見たことのない、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を操作させてもらったり、設置工事中だった放射線治療装置「トモセラピー」を内覧したり、がん患者の外科手術を肉眼で見学させて頂きました。本当にメスでヒトの身体を切るんだなと当たり前のことを実感しました。おとなの社会科見学?そんな浮ついた気持ちも湧き起こるほど、全体を通してとても興味深かったです。

がんドックに行こうかと、今ネットで調べています。近所の総合病院では6万円…高いなあ(昔はもっと高額だったみたいだけど)…要検討です。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。