うつ病は10人にひとりが経験する病気です。うつうつしい気分が二週間継続したら、クリニックの門戸を叩きましょう。早期発見・早期治療が功奏します。

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うつ病の治療が始まると「まずは寝ましょう」と言う先生と「寝てばかりいないで体を動かしましょう」と言う先生がいます。どちらが正しいのでしょうか。

結論から言えば、どちらも正しい。うつ病治療は、抗うつ剤(SSRIなど)の服薬と、十分な休養をとることから始めます。休養は環境面と身体面を考えます。うつの原因に例えば職場の環境要因があるなら、休職するなどして物理的に距離をとりましょう。そして睡眠を確保します。眠れないようなら睡眠薬の使用も視野に入れてください。それくらい眠りは大切です。一方で寝てばかりでは体力が落ちます。回復には体力が必要です。適度な運動も必要なのです。

運動と言ってもジムトレーニングとか人混みのライブにいくとか、そこまでハードなものは必要ありません。近所を散歩するとか一駅ぶん歩くとかストレッチするとか、そういうイメージです。ある本には「気晴らし行動は必要ない。うつ病には興味の減衰があるので逆効果になる。」と書かれていました。そう思います。身体を動かすと睡眠にも好影響が出やすいので、やはり必要だと思います。

セラピストも人間ですから個人の価値観に基づいたカウンセリングが展開されることになります。睡眠優位の先生、運動優位の先生、いろいろいます。

ここまでの論を台無しにする真理を言うと、万人に効く一辺倒なやり方なんてないんです。個人差がありますから、その人にとって回復するやり方が一番良いやり方になります。まずは先生が支持するセオリーから始めて、効果を振り返りながらカスタマイズする。心理士はその手伝いをしていきます。

世の中には頑張っていい努力と頑張っちゃいけない努力があります。うつ病をひとりで治そうとする努力は後者です。他者を頼ることは迷惑をかける悪行ではありません。回復への道を専門家と共に歩んでいきましょう。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。