自己肯定感(自尊心と言い換えてもいいかもしれない)とは、全体として自分のことが価値あるものにみえることを指す。自己肯定感の低い人は、常に誰かに対しての怒りや憎しみを抱えている。

自己効力感とは、自分が行為の主体であると確信していること、自分が外部からの要請にきちんと対応しているという確信を指す。自己効力感の高い人は、課題に積極的に取り組もうとする、成功する確率が高まる、似た課題にも積極的に取り組む、その特定の行動をする際の不安が低い、などの特徴がある。

自己肯定感を高めるために、自己効力感を高めようとする人がいる。履き違えてはいけない。何かができるようになったからといって、自分を認められる(好きになる)わけではない。自己肯定感と自己効力感は全くの別物である。自己肯定感は、そのままの自分を受け入れることでしか、解決できない。

そしてこれは、なかなかに難しい作業である。

セラピストができること。それは青山テルマ程にそばにいて支えることくらいだろう。自分で自分をまるごと引き受ける覚悟は、自分の中でしか醸成できない。否定や肯定、絶望や怒りなどを繰り返し、私の言葉でいえば「自分は自分以上でも自分以下でもないという、あきらめの境地」にたどり着く。自分なりの解をつくるまで、セラピストはここにいるよ。どこもいかずに、待ってるよ。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。