この前ひさしぶりに人前で話をする機会があり、袖で自分の出番を待っている間にもの凄く緊張してきて、心臓がバクバク高鳴りしたんです。「いつ試すの?今でしょ(古い)」とばかりに漸進的筋弛緩法を実践してみたら、本当にすぐに収まったんですよね。びっくりしました。

漸進的筋弛緩法とは

ジェイコブソンが開発したリラクセーション法で、体の一部の筋肉を一旦緊張させた後に一気に弛緩させ、その筋感覚を感じ取ることで更に深く弛緩させることを目的とします。振り子の原理です。ある事象に対して生じた右に振れ切った過緊張を、左に意図的に身体硬直の緊張をつくることで相殺するのです。身体の弛緩に意識を集中内省すると、胸の鼓動が収まるのがわかり、気持ちが落ち着いてきます。心身バランスは個人差があるので確実に効くとは言いませんが、私には効きました。人間の(私の)こころと身体って、結構単純なんだなと思います。

動画サイトでも紹介されているので、「漸進的筋弛緩法」で検索して、実際の動作は観てご確認ください。動作自体は簡単なので、覚えておくと重宝しますよ。

呼吸法

漸進的筋弛緩法が対処(瞬間)療法なら、呼吸法は根本(長期)療法のリラクセーション法かと思います。呼吸を整えることで、気持ちを落ち着け緊張を和らげることを目的とします。呼吸法の呼吸は肺ではなく腹で行う腹式呼吸です。毎日の朝昼晩の生活に取り込むことで、気分の安定を獲得していきます。

●丹田呼吸
足を組んで腰を安定させ、頭が背骨の上にまっすぐのるように整えます。鼻から息を吸い口で吐きます。丹田呼吸をします。丹田はへその下10cmのところにあります。
●仰臥禅(ぎょうがぜん)
寝つけない時に行います。胃の位置に手を置き、息を吸いこむ。手を下腹部に移動させながら下腹に息をためる。一秒息を止め、ゆっくりと息を吐く。
●一息禅
姿勢を正し、肩の力を抜きます。そして下腹に意識を集中させ、鼻から息をゆっくり吐き、ゆっくり吸います。これを数回繰り返します。吐くときは、心の中のモヤモヤを全部吐き出すイメージです。鼻で吸って口で吐いても構いません。

参考「心が大きくなる座禅のすすめ」中野東禅著

●3-2-10呼吸法
①椅子に浅く腰かけ、背筋を伸ばす。目を閉じて呼吸に集中する。
②口をおちょぼ口に開け、ため息をつくように、口から少しずつ細く長くゆっくりと10数えながら息を吐く。途中からお腹を両手で少し押さえて、からだを前傾させると長く吐ける。吐く際に、気になることが吐く息と共に体の外に出ていき、頭がからっぽでスッキリになるようにイメージする。
③吐き切ったら、手を緩め、鼻から3数えながら息を吸う。前傾したからだを起こし、胸を開きながら行う。肩はリラックスする。空っぽの頭に、元気なエネルギーが入り込むイメージで行う。
④2数えるあいだ、息を止める。元気なエネルギーが、体中沁み渡るようイメージする。
⑤また、吐き始める。しばらくの間(5分から10分)繰り返す。うつの場合は15〜20分ほど行う。

参考「日本産業カウンセラー協会 いまここTokyo」2019.10 第61号

やり方は流派によって色々あります。いくつか試して、自分のリズムに合うものをひとつ選んで、それを朝昼晩で継続することが大切です。早い人なら2〜3週間ほどで効果を実感できるでしょう。

心身のトレーニングを考えるとき、最初の一手は、身体面でいえばストレッチ、メンタルケアでいえば呼吸法です。こころは実態がないので、いきなりこころを扱うのは難しいところがあり、呼吸に集中し自分の内界に意識向ける事がメンタルトレーニングの初手になります。

一息禅はどんなシチュエーションでも行えるのがいいですね、私は通勤電車とかエレベーターの中でよくやってます。呼吸は誰でも行っていますが、呼吸法では意識して行うことが大事です。呼吸法は効果に至るまで時間はかかるけど、多くの方にオススメしたい心理療法です。

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cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。