GWの最中に投げ込むテーマではないのかもしれないけど、この先を憂い、逆に今だからこそ頭の隅に留めておいた方がいい情報だよな、と信じてポストする。転ばぬ先の杖として読んでもらえたら嬉しい。

COVID-19ウィルスのせいで「死」が急激なスピードで皆に等しく身近な存在になってしまった。日本で一般市民の命が日常レベルで脅かされるなんて、空襲に怯える第二次世界大戦以来なのではないだろうか。異様な景色に日々戸惑っている。

時に2020年3月は自殺者数が減ったという噂を小耳に挟んだ。本当であるならその理由は人々の関心がマスクの確保に集中していたからかなと予想したが、調べてみたら多分2019年の減少との勘違いだと思う。単月に関しては例年と大差はなさそうだった。

経済と自殺者数

自殺に関しては、むしろここからだ。過去の自殺対策白書(厚生労働省)には、経済状況と自殺との関連性が記載されている。景気動向指数の増減と、経済・生活問題による自殺者数の増減には、負の相関がある。

日本の自殺者数は2003年の34,427人がピークで、バブル経済の崩壊からリーマンショックあたりまで毎年3万人を超えていた。その後は景気回復や防止対策が功を奏して、2019年は19,959人、2万人を切った。(警視庁

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今回の経済停滞により、解雇、倒産、自己破産などが増え、自殺者数も増加するだろう。しかし、希望的観測ではあるが、バブルやリーマンの水準まではいかないと踏んでいる。ひと昔前と違い今はSNS等による浅くとも拡い繋がりがある。今のところ後手の印象しかないけど、給付金措置などにも期待したい。こうしたネットワークが命綱となり、憶い止まれる人は多く生まれると思う。

希死念慮への対応

死が脳裏をよぎったらどうするか。連絡が取れる今までの人生で支えになってくれた人に話をしてみてほしい。信頼できる誰かに話をすることで、こころのつらさは軽減する。もし、そのような人がいないときには「こころといのちの相談窓口」に電話してみる。問題の根本は解決しないけど、こころの負担が軽くなるだけで、光明が差し込むこともある。誰かと話をしてからでも遅くはない。

相談される側が気を付けることは、まずは本人の語りをひたすら聴くことだ。上手い言い返し、具体的な助言、励ましはいらない、むしろ邪魔である。「うん」とか「そうか」とか「それはきついな」とかの相槌をつかって本人の苦しさに寄り添い、ひたすらに聴くのがいい。ひとしきり聴いた後に、心配していると言葉にして伝える(気持ちだけでは伝わらない。疲弊していると空気を読むという高度な情報処理はできない状態になる)、一緒に考えようと誘う、そして専門家への相談を促そう。基本的には「受け止める」ことに専念すれば大丈夫。

社会不安と精神病

2月後半頃から社会情勢が慌ただしく不安定化し、それに合わせてメンタルクリニックに来院する患者さんの顔ぶれも変わっていった。

3月は新患が激減した。日常生活に直接的には困っていない、今じゃなくていいやという軽症の方の来院がなくなった。回復の兆しがなかなかみえない重篤な患者さんは来院してきた。来れば心理カウンセリングもセットにするので、薬の処方だけではなく、話がしたいという動機もあったのだろう。

4月になり、うつ病までいかないうつ状態の人や、不安症気質の人が来院するようになった。社会の不安定さと自分のムードがシンクロしてしまった印象を受けた。こういったケースが今後増えてくるだろう。抱えきれないと感じたら躊躇なくメンタルクリニックへ。オンラインカウンセリングでもいい。軽症の方が支援しやすいし回復も早い。どうぞ頼ってほしい、精神科の門は常に開かれている。

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アフターではなくウィズコロナ、コロナのある暮らしという考え方へのシフト。曖昧模糊な状況でも歩みを止めないレジリエンスが問われている。元来人類は恐怖や危機と共に進化し続けてきた。我々にはこれができるDNAが備わっている。今また更なる適応進化を遂げる時が来たのだ。生き残ってやろうじゃないか、私はこの現実をサバイブする。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。