「ゆたか(豊か)」を辞書で引くと、満ち足りて不足のないさま、心や態度に余裕があって落ち着いているさま、と定義されている。
20代中頃までは、何も持っていない何者でもない自分が嫌で、金が欲しい、彼女が欲しい、称賛が欲しい、承認して欲しいとTHE BLUE HEARTSの歌のごとく貪っていた。でも不思議と、何かを手に入れても満ち足りた感じにはならなかった。
ここに、心理学者マズローが唱えた「欲求階層理論」がある。
マズローは人間の欲求を、低次なものから高次なものまで5段階に分類した。①から④を満ち足りていないものを満たそうとする欠乏欲求、⑤を自己のあるべき姿を模索し成長を求める成長欲求とよび、区別した。基本的には下位の欲求が満たされないと、上位の欲求は出現しないとしている。
この理論に沿って考えると、欲を満たしてもどこか満ち足りなかったのは、さらに高次の欲求が現れていたからである。40代を迎え、欠乏欲求が完全に満ちているかといわれれば怪しいもんだが、昔よりは固執しなくなっている。
成長欲求に関しては、自己実現ってどういうこと?理想とする自分って何?と疑問は絶えないのだが、まあいいか、したいことをしようと適度に手放せるようになった今の自分は、ぼちぼち「ゆたか」なのかもしれない。