好きな心理学用語がいくつかあります。そのうちのひとつが「カクテルパーティー効果」なのですが、何が好きかって、言葉を聞いた瞬間に脳裏に浮かぶ情景でして(そこっ?笑)、英国紳士がシャンデリアと螺旋階段のある大広間でグラスを片手に談笑している姿がみえる。効果名を和式に変換しようとすると、社交会効果、招宴効果、酒宴場効果…ダメだ、どれもしっくりこない笑。やっぱりカクテルパーティー効果ですよ。

ちなみに、心理学者Cherryによって提唱されたこのカクテルパーティー効果とは、特定の情報に選択的な注意を向け、他の情報を無視することができる現象および効果をいいます。例えばパーティ会場のように、何人もの声が同時に聞こえてくる騒然とした場面であっても、我々は特定の人との会話に加わりその内容を理解することができます。人類がみな聖徳太子だったら、存在しなかった効果ですね。

この「選択的注意の能力」は現代にこそ活きると思っています。ヘイトやフェイクも入り乱れる情報社会の中で、自分に必要で有益な情報だけに注意を払える術を身につけたいものです。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。