着るたびに気恥ずかしかった白衣ですが、近頃やっと鏡の自分に見慣れてきました。Mizuno×Uniteのドクターコートはストレッチが効いて着心地グッド、超お気に入り。袖を通して襟を正せば、よしっ!と仕事モードに切り替わります。

白衣の歴史

調べてみると、古くは紀元前のインド。医師は清潔であることを義務づけられ、その一環として白い衣を纏うことになっていたようです。衛生への配慮として白い衣が選ばれたことは、現代の白衣との興味深い共通項です。

19世紀の西洋の医師は、黒いコートを着用していました。黒は礼服の色であり、神聖なる医療の現場にもふさわしい色と考えられていたためです。衛生管理よりも、儀礼的な慣習が優先された結果とも考えられます。

20世紀に入り、ナイチンゲールを中心に行われた衛生改革により、看護師も白衣を着用するようになりました。(以上、ユニフォームタウンより参考)

Wikipediaによれば、白衣は主に、医療従事者、衛生・調理従事者、実験従事者等が着用する。学校の給食配膳などの場面では児童・生徒も着用する。白衣の着用には、衛生、災害予防、制服としての機能がある、と記載されています。ドクターやナースだけのものではないんですね。

大学病院の場合

私が心理士として働いている大学病院では、原則的に外来・入院棟では白衣着用、スタッフ棟ではどちらでもいい、ということになっています。

ここでの白衣は、医療チームのユニフォームとしての意味合いが強い印象があります。電子カルテを見ると、患者ひとりに対して複数の専門職員が関わっていることがわかります。チームメンバー全員の名前と顔は知らないけど、それぞれが一所懸命に自分の役目を果たしています。白衣はその一員である印です。

もうひとつは、患者さんとスタッフの一目瞭然の区別。建物が大きくて人の出入りが多い病院なので、何かわからないことがあったら白衣を着てる人に声をかければいいという、患者さんの安心感にも一役買っていると思います。

リワークとデイケア

別の勤務先であるメンタルクリニックでは、「リワーク」の現場では着るけど、うつ病や統合失調症から日常生活の構築を目指す「デイケア」では着ないことになっています。その理由は、リワークは非日常、デイケアは日常の枠組みで運営しているからです。

当院のリワークは、うつ病から職場復帰を目指すプログラムです。職場は家庭とは違い、緊張感のある場です(家庭のほうが緊張感ある人もいるだろうけど)。そうした環境下に戻っていくトレーニングの場ですから、白衣はピリッと身の引き締まる空気感の醸成に役立つのです。

プログラムの目的に対する道具として使われる白衣も面白いです。

権威という治療効果

プラシーボ効果とは偽薬の投与によってみられる治癒効果で、薬物そのものの効能ではなく、投薬された安心感や医師への信頼などの心理作用によって症状が改善する状態をいいます。白衣を偽薬に例えたら怒られるでしょうか(多分怒られる)。

でもね、現実問題として、あると思うんです。専門家が言うんだからそうなのかなというやつ。だからこそ白衣を身に纏う人間は、傲らず謙虚にごまかさず、患者の最大利益のために自己研鑽を続けねばならないのです。

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臨床現場にどっぷりと身を置くこと3ヶ月、職場の雰囲気は掴めてきました。ここにきてやっと、自分の行為が本当に患者さんの支援になっているのか、振り返る部分にパワーを注げるようになってきました。公認心理師という国家資格が施行されてまだ2年、心理職はこの先の時代でも更に活躍の場が広がると確信しているので、未来の後進のためにも、白衣に恥じない仕事をしていきます。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。