社会心理学的に「差別」を語るには、まず内集団と外集団の説明から。自分が所属していることを意識した集団を内集団、それ以外の集団を外集団と呼ぶ。「所属を意識している」ことが重要で、単に所属しているだけでは、つまり帰属意識が低い場合はこれに当てはまらない。人は内集団には好意的態度を、外集団には非好意的態度をとることが証明されている。
特定の集団への所属を強く意識したとき、我々は「社会的アイデンティティ」をもつようになる。社会的アイデンティティとは、自分が何者であるかを、所属している集団や組織を基準に認識することをいう。やがて、自分が所属する集団(=内集団)に生じる出来事を、我が事として感じるようになる。内集団が褒められれば自分が褒められたことのように喜び、内集団が貶されれば自分が貶されたことのように怒る、といったように。
我々には自尊感情が備わっているため、自己評価を高く維持したいという欲望がある。社会的アイデンティティをもつ場合では、内集団を外集団より高く評価することによって、自己高揚を達成することができる。この外集団との対立構造が集団間差別を生みだすことになる。
さて、対立する集団間の葛藤は解消させることができる。
ひとつは双方が協力せざるを得ない状況を設定すること。2つの集団が融合して1つの内集団になるのである。もうひとつは自分が外集団の中に入り、理解し、その集団を内集団だと意識変容すること。人は朱に交われば赤くなるのである。
COVID-19は世界中に混乱と不安をもたらしているが、これは世界が1つの内集団になれる好機でもある。70億人がお互いの手を取りこの脅威に一枚岩で立ち向かい、またその一方で、同じ地球生命体の一員であるウィルスへの理解と共存を探る。「ONE TEAM」の精神をラグビーだけで終わらせるのはもったいない。