反町隆史じゃないけど、言いたいことを言わずに心の奥底に閉じ込めておくとポイズンになります。でも、露骨に言って嫌な空気になるのは避けたいし…何か良い表出の仕方ってないのかな…。あるんです、アサーションです。

今回は全面的に「ピポラボ 働きがいを応援するメディア」さんから参考・引用させてもらっています。ありがとうございます。

●アサーションとは

アサーションは、自分も相手も大切に扱うコミュニケーション手法です。ポイントは以下の2つです。

・自分の意見をしっかりと主張しつつ相手の意見も尊重する
・お互いを思いやって人を傷つけないようにする

アサーションを身につけると、コミュニケーションによるストレスが軽減します。

言いたいことを我慢し続けるとストレスになります。発言を控える人の心理は、場の空気を乱したくない、自己主張をしたら相手を傷つけるかもしれない、などでしょうか。相手を思いやりながら自分の意見をしっかり伝えるコミュニケーションが取れるようになることで、人間関係の苦手さや軋轢は薄まるでしょう。

また、スムーズに自分の要求が伝えられるようになります。アサーションは、相手を傷つけずに自分の要求を伝える手法です。自分の要求を伝える際、つい相手を責めるような言葉を選んでしまう場合があります。しかしこれだと相手が反発してしまい、こちらの言いたいことが伝わらない可能性が出てきます。相手を尊重する言葉を選んで主張することで相手も受け入れやすくなり、結果的に円滑に物事が進むようになります。

●アサーティブ・マインド

アサーションの前提となる基本姿勢がアサーティブ・マインドです。アサーションを実践するためには、4つのアサーション・マインドを意識すると良いでしょう。

①誠実であること
②対等であること
③率直であること
④自己責任

①誠実であること

まずは、自分の気持ちに正直に誠実であることです。生活している中で、つい他者の顔色をうかがってしまう、どのように思われているのか気になってしまう人は多いはず。しかし、自分の感情に嘘をつくとストレスが溜まっていきますし、相手にとっても誠実ではありません。自分の感情に素直に正直であること、相手の気持ちに誠実であることを意識しましょう。

②対等であること

自分と他者は等しく対等であり、互いに尊厳のある人間であることを意識します。相手によって態度を変えてしまうことは対等に扱っていないことと同義ともいえます。誰が相手でも同じように接する、態度を変えないことを意識します。相手を尊重し対等だと認め合えば、誰であっても同じ態度で接することができます。

③率直であること

自分の意見や主張をまっすぐに伝えましょう。率直であることの根底には、自分と他者をどちらも尊重する考え方があります。この考え方がなければ、自分の意見だけを押し通そうとしてしまいます。コミュニケーションに勝敗はありません。相手の主張をまっすぐに受け止め、かつ自分の意見を伝えることが率直である証です。

④自己責任

自分の意見をしっかりと伝えた結果、相手の反応が望むものではない場合もあります。相手がどう感じてどう反応をするのかは、相手が決めることです。相手の反応を尊重し、その反応に対して自分はどう感じどう反応するのか、そこに注意を向けていきます。相手を変えることはできません、自分がどうするかだけです。

●アサーショントレーニング

さて、具体的なテクニックの話に入ります。アサーショントレーニングとは、自分も相手も大切にするアサーティブなコミュニケーションを身につけるための訓練です。アサーショントレーニングの基本は「相手の目線に立つ」ことです。自分のことだけを考えるのではなく、相手の考えや気持ちを尊重する意識を持ちましょう。また、反復練習することも大切です。何度も訓練を繰り返していくことでアサーティブな考え方が浸透し、自然とアサーションを行えるようになります。4つのポイントを意識します。

①「I(=私)」メッセージで発信する
②自分の気持ちや状況を伝える
③否定的にならずに代替案を出す
④素直な気持ちを伝える

①「I(=私)」メッセージで発信する

まずは、自分を主語にしましょう。何かを伝える際には「私は○○だと思います」という言い方をします。「あなた」を主語にしてしまうと、相手を責めるようなニュアンスになってしまい、言いたいことが上手く伝わりません。相手を主語にすると「○○しなさい」「どうして書類の提出が遅いのか」と責めたり詰める印象がでてきます。私を主語にすると「○○してくれると(私は)嬉しい」「書類を早く提出してもらえると(私が)助かる」という表現になり、攻撃要素がなくなります。この “Iメッセージ” は汎用性が高いのでめちゃくちゃお勧めです。

②自分の気持ちや状況を伝える

自分の気持ちや状況をはっきりと伝えることも大切です。言いたいことを飲み込んでしまうと、相手には何も伝わりません。全てを以心伝心で済ますことは不可能です。何か困っていることがあるのなら我慢せずに「~してくれると(私は)助かります」「このような状況なので、(私は)手を貸してもらいたい(と思っています)」と自分の状況をわかりやすく伝え、素直に協力を要請しましょう。この際、必要以上に下手に出たりビクビクしたりすると、上手く伝わらない可能性があります。アサーティブ・マインドの対等性を思い出しましょう。相手の気持ちを思いやることも大切ですが、自分と相手は対等なのだと意識してはっきりと伝えることがポイントです。

③否定的にならずに代替案を出す

上司から仕事を頼まれたり同僚から手助けを頼まれたりした際、余裕がなく断りたいと思うこともあるでしょう。このとき、すぐに「無理です」と突っぱねてしまうのは得策ではありません。理由も伝えずにただ断ってしまうと「仕事をしたくないだけ」「自分勝手」と思われてしまう場合もあります。こうなると円滑なコミュニケーションがとれなくなるので、相手の気持ちを考えた対応が求められますが、とはいえ何でもすぐに受け入れてしまっては、抱えられる仕事の量を超えてしまいます。そのため、代替案を出すと良いでしょう。たとえば「午前中は仕事が詰まっているので、午後からでもいいですか」というように「こうしてくれたら(私は)手伝える」という代替案を出せると相手も納得しやすくなります。否定から入るのではなく、相手の主張を受け止め、前向きな言葉や態度で返していきます。

④素直な気持ちを伝える

アサーションでは、自分の素直な気持ちを伝えることも重要です。仕事で上司や同僚に褒められたとき、つい謙遜する人も少なくありません。褒められた際には謙遜しすぎずに、嬉しいという気持ちを素直に伝えることが大切です。謙遜しすぎてしまうと、褒めてくれた相手の気持ちを受けとっていないことにもなり得ます。嬉しい気持ちを率直に表に出すことは、より良い自己主張につながるのです。また、相手に対してしっかりとお礼を伝えることを忘れてはいけません。嬉しい気持ちにしてくれた人へ「ありがとうございます」と伝えることで、相手への配慮にもなりますし、自分の頑張りを肯定することにもなります。

※ ※ ※ ※

アサーションは、自分と相手を尊重したコミュニケーション手法です。自分にとっても相手にとっても利益が生まれるコミュニケーションになるでしょう。日本には忍んで耐える姿勢が美徳とされてきた文化的背景がありますが、時代は変遷しています。古き良き風習をバックボーンとして持ちつつ、現代社会へとアップデートしていく姿勢が必要です。変えていくには困難がつきものです。しかし変わることで得られる利益もあるわけです。アサーティブなコミュニケーションを意識して、双方にとってメリットのある関係を築いていきましょう。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。