ニュースを見ていて知った言葉「リキッド消費」という表現が面白いなと。
リキッド消費とは、モノやサービスを長期的に所有することを前提とせず、必要に応じて柔軟に商品を利用する消費行動のこと。リキッド(liquid)は英語で「液体」を意味し、液体のように移ろいやすく、掴みどころがないことを表現している。レジリエンス(しなり)に似たニュアンスだと感じた。
語源は、ポーランド出身の社会学者バウマンが提唱した概念 「リキッド・モダニティ(Liquid Modernity)」 に由来している。
リキッド・モダニティとは
バウマンは現代社会を「リキッド・モダニティ(液状化した近代)」と呼び、かつての「ソリッド・モダニティ(固体の近代)」と対比した。
- ソリッド・モダニティ(Solid Modernity):安定した社会、固定的な価値観(例:終身雇用、所有重視)
- リキッド・モダニティ(Liquid Modernity):流動的な社会、変化し続ける価値観(例:転職・移動の自由、体験重視)
バウマンは、現代社会では人々の生活様式や価値観が流動的になり、物事の「所有」ではなく「使用」が重視されるようになったと述べている。
リキッド消費の誕生
この概念をもとに、2017年ごろから経済学やマーケティングの分野で 「リキッド消費」 という言葉が使われるようになった。
従来の「ソリッド消費」は、商品を所有し長期間使用する消費スタイルで、例えばマイカー購入やCD・本のコレクションなど。対して「リキッド消費」は、所有にこだわらず、必要なときに使う消費スタイルで、例えばカーシェア、サブスク、ストリーミングサービスなどである。
この現象の背景には、以下の要因が影響している。(以下、ChatGPT参照)
経済的背景
(1) 所有コストの上昇
住宅価格や駐車場代の高騰により、大きなモノ(家、車など)を所有することが経済的に難しくなっている。維持費(修理・保険・管理費など)が負担になり、「所有すること」がリスクとみなされるようになった。
(2) 若年層の可処分所得の減少
非正規雇用の増加や、長引く経済低迷により、特に若年層の可処分所得が減少。高額なモノを購入するよりも、必要なときにだけ利用する方が合理的な選択となる。
社会的背景
(1) 「所有から利用へ」の意識変化
かつては「持つこと」がステータスだったが、今は「体験」や「利便性」を重視する価値観が広がっている。例えば、車よりカーシェア、CDよりストリーミング、書籍より電子書籍サブスクなど。
(2) 都市化と人口の流動性
都市部での生活では、モノを持たない方が身軽に暮らせる。転職や転勤が多く、頻繁に住む場所が変わるため、所有することが負担になりやすい。
(3) 環境意識の高まり
サステナビリティ(持続可能性)への関心が高まり、「大量消費・大量廃棄」よりも「シェア・再利用」が支持されるようになった。例えば、ファッションのサブスク、リユース家具、フリマアプリの活用など。
技術的背景
(1) スマホとネットの普及
どこでもオンラインでサービスにアクセスできるようになり、所有する必要性が低下。例えば、サブスク音楽(Spotify)、動画配信(Netflix)、電子書籍(Kindle Unlimited)など。
(2) シェアリングエコノミーの成長
IT企業がプラットフォームを提供し、個人同士のモノ・サービスの共有が可能に。例えば、Airbnb(宿泊)、Uber(移動)、メルカリ(中古品)など。
(3) AIとデータ活用
ユーザーの好みに応じたレコメンド機能(例:Spotifyの自動プレイリスト)により、「所有せずに最適なものを得る」体験が可能になった。
心理的背景
(1) FOMO(Fear of Missing Out)
「所有すると他の新しいものを試せない」という不安が生じ、所有よりも都度利用が好まれる。例えば、定額制ファッションレンタル(毎月新しい服を試せる)など。
(2) 即時満足(Instant Gratification)
物理的な購入よりも、ワンクリックで利用できるデジタルサービスの方が便利と感じる。例えば、電子書籍、動画配信、クラウドサービスなど。
(3) ミニマリズムの浸透
「モノが多いとストレスになる」という考え方が広まり、持たないことが心地よいとされる。例えば、シンプルライフ、デジタルノマドの増加など。
最後に
リキッド消費が広がる背景には、経済的負担の増加、ライフスタイルの変化、デジタル技術の発展、そして人々の心理的変化が密接に関係している。私自身も、20代に抱いていた所有する豊かさから、現在は持たない軽やかである豊かさへ価値観が移行してきている。人間としての成熟のせいかと思っていたが、社会的背景の影響も大きいのだろう。リキッド消費は柔軟で効率的な消費形態として今後も持続するはずだ。
