今年のGWは楽しめましたか?ここ2年間はコロナ禍により外出もままならない状態でしたから、完全収束はまだ迎えてないものの、遠出したり、街中に出向いたり、友人と会合したりと、行動的に過ごしたのではないかと思います。お家派の方々も、社会の不穏感が若干薄らいだ今年の方が、昨年よりは気楽だったのではないでしょうか。

5月病なる病気があります。5月病は正式な医学用語ではありません。医療機関では「適応障害」「うつ状態」といった診断名がつくこともあります。新社会人は、研修を経て5月から実際に仕事を始めて症状が6月に見られることがあるため、6月病とも呼ばれます。

目次

  1. 症状
  2. 原因
  3. 対処法
  4. 周囲の関わり方
  5. まずは、部下や後輩の様子を観察し、変化に気づく
  6. 次に、話を聴く
  7. そして、対処法を一緒に考える
  8. 上司や先輩が言ってはいけない3つの言葉
  9. 「なんで」
  10. 「やる気だそうぜ」

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症状

大分類すると「気分の症状」「行動の症状」「身体の症状」になるでしょうか。このような症状が出ていたら、要注意です。

●気分の症状
無気力、憂うつ、気分が重い、気分が沈む、悲しい、不安、イライラする、元気がない、集中力がない、好きなこともやりたくない、細かいことが気になる、悪いことをしたように感じて自分を責める など

●行動の症状
反応が遅い、頭が働かない、表情が暗い、涙もろい、落ち着かない、飲酒量が増える など

●身体の症状
体がだるい、疲れやすい、食欲がない、性欲がない、頭痛、肩こり、めまい、動悸、胃の不快感、便秘がち など

原因

色々な原因があろうと思いますが、ひとつは、4月からの環境変化に対応しようといつも以上にエネルギーを使った反動として。GWでエネルギーの充電ができたと思いきや、休みの生活リズムから身体も気構えも戻せなくなった、という解釈です。バーンアウト(燃え尽き症候群)のような感じですね。

https://note.com/embed/notes/n384bf98dc14f

もうひとつは季節性なもの。日替わりで訪れる気温の変化や雨など気候の変化に、知らない間に身体が疲労し、結果的にこころにも影響が出ている可能性があります。うつ病にも「冬季うつ病」なるものがあり、季節や大気がヒトの心身に与える影響は無視できないと考えられます。

対処法

まずは、本人が回復に向けてとれる行動を3つ挙げてみます。

●仕事の仕方
・先のことを考えずに、目の前の仕事だけ粛々と行ってみる
・仕事のアポ(他者との約束)を入れる など

目先に集中できたら、徐々にエンジンがかかってくるかもしれません。「仕事のアポを入れる」は私が会社員だった時に、上司がアドバイスしてくれた対処法です。私の場合はこれが効きました。お尻を決めちゃえば、動かざるを得なかったです。正月明けの無気力にも有効でした。

●専門家を頼る
・マッサージや整体にいく、身体をほぐす
・心療内科などの病院に行く など

認知行動療法の理論に則れば、身体とこころは繋がっていますので、マッサージやリラクセーションで身体が軽くなるとこころも軽くなる効果は期待できます。病院へ行って、今の状態を医師に聴いてもらったり、投薬治療で回復することもあるでしょう。

●自身でできるケア
・ストレスコーピングの方略を見つめ直す
・呼吸法

ストレスコーピングでは、自分が得意なやり方を継続しつつ、他のやり方も試してみましょう。呼吸法は副作用が非常に少ない、長期で整えるにはとてもよいやり方です。使えるようになっておくと得が多いです。

https://note.com/embed/notes/nffb8ac64ce1d

https://note.com/embed/notes/n255f6b511d77

周囲の関わり方

職場においては、特に上司・先輩が部下・後輩にとれる行動があると思います。3ステップで紹介します。

まずは、部下や後輩の様子を観察し、変化に気づく

表情が暗い、口数が減ったなど、行動の症状は、本人以外の周囲の人のほうが気付きやすかったりします。行動の症状をフックにして、声をかけてみましょう。

次に、話を聴く

体調はどうか、どんな気持ちでいるのか。評価をせずに、相手が語る言葉を受容し理解しようと努めて聴きます。ひたすら聴きます。「それは大変だね」「それは困ったね」と、気持ちを肯定し、本人なりに頑張っていることを労いましょう。打ち明けてくれたことに対する感謝の気持ちを忘れずに。

そして、対処法を一緒に考える

こちらからの一方的なアドバイスは相手に刺さりません。対処法などを一緒に考えて、最終的には本人が自己決定する形に持っていきます。

上司や先輩が言ってはいけない3つの言葉

「なんで」

話を聴く場面で、原因追求、責めるような言葉を投げないように気をつけます。

「なんで、そうなっちゃうの?」と聞かれても、自分でもなぜそうなっているのか、理由がはっきりせず、顕在化していないことが多々あります。聞かれても答えられないので、本人からすると追い詰められることになります。

「やる気だそうぜ」

出したくても出ないから困っているのです。励ましの言葉のつもりでも、本人からすればなんて無責任で思いやりのない言葉だろうと感じます。

「◯◯すれば治るよ」

話を十分に聴けていない、本人の心情の吐露が不十分な状態での安直なアドバイスは「この人、わかってくれないな」という不信感につながります。まずは相手の目線に立って、話をしっかり聴く姿勢からです。

対処法を一緒に考える場面で、上司自身の過去体験に基づいた独善的なアドバイスは相手に刺さりません。「それはあなたの場合でしょ」という気持ちになります。「自分の場合はこうやったけど、どうかな?」とか、「一般論ではこういうやり方があるらしいけど、やってみるかい?」と、「どんな回復方法があるだろうね」という寄り添って一緒に考える姿勢を示しましょう。

回復方法や治し方は人それぞれという前提に立ち、まずはなんでも話していい心理的安全性を醸成することに全意識を傾けましょう。どうするかは自己決定させるように、主導権は本人に握らせたまま相談できるといいですね。

※ ※ ※

五月病は思い返せば誰もが一度や二度、経験があるでしょう。事前に知識があれば深刻化する前に対処できます。軽視しないことが重要なのです。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。