物事の認知や行動様式を変化させていくには、本人の努力はもちろんのこと、周囲の関わり方が重要です。本人の意思だけではどうにもならなかったから悩んでいるのです。認知や行動に変化を起こすことは、ひとりではなかなか難しいことです。

認知や行動の変化を促す面談技法に「チェンジトーク」があります。支援者は「開かれた質問」「是認・確認」「聞き返し」「要約」などを用いて、以下の4つのポイントに焦点を当て、本人の「変わること」について話をします。

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現在の認知や行動様式には、それをするその人なりの理由があります。必ずあります。まずはそこを言語化(顕在化)しましょう。次に、現在の認知や行動によって生じている不利益を挙げます。不利益=悩みとなっているはずです。そこからチェンジトークの4分類に沿って、変わることでの利益について考えていきましょう。

変化への決意が醸成できたら、今度は行動に移します。行動変容ステージモデルは、人間の健康行動の変容を考える上で通る段階を5ステージに分けています。支援者は、その人の現在のステージを把握し、段階に応じた働きかけをします。

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はじめの一歩には、物凄いエネルギーと勇気が必要です。「失敗したらどうしよう、二度と立ち上がれなくなってしまうのではないか」「どうせ変わらないんじゃないか、今まで散々変われなかったのだから」傷つくことを恐れ、尻込みする気持ちが出てきます。出てきて当然です。支援者はそれでも困難に立ち向かおうとするクライエントの勇気に敬意を払い、臆病になる気持ちに理解を示し、本人が自分なりのやり方で進む道を、支えながら一緒に歩んでいきます。道はあります。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。