2024年8/23〜25に、パシフィコ横浜会場にて、第43回 日本心理臨床学会 対面大会(Web大会は9/20〜10/17)が開催されました。この学会名称、「日心臨」と略されるみたいです、知らなかったなあ。

日心臨学会の参加は2回目です。初回は大学院生時に、運営バイト員として参加しました。臨床心理士として、聴講者として参加するのは今回が初でした。

メインホールで催されたシンポジウムでは、登壇された先生方が熱い討論を繰り広げられ、心理という領域特性からくる成果の見えにくさを学問や科学で証明していく重要性を痛感しました。どこかで過去の栄光に縋っていないか、専門性を隠れ蓑にして理解される努力を怠っていないかなど、我が身を問われる気分でした。

口頭発表やポスター発表を聴見して気がついたのは、途中報告でもこの水準のものでもいいんだ、ということ。誤解を招く表現かもしれませんが、もっと完璧な仕上がりでないと世に出してはいけないと思い込んでいたようです。当然、倫理委員会や学会誌などの審査を通過した真作ではあるのですが、自分の中ではハードルが下がった気分でした。研究発表、本の執筆、講演会など色々やって、臨床知を広く届けていきたいです。

思考の凝り固まりに気をつけようと思いました。場にそぐわぬ発言をする人、自分の主張が正しいと言わんばかりに批判し続ける人を見ました。自戒を込めて、年齢が上がると経験値が増えるため、思考がアルゴリズムからヒューリスティックに偏る傾向があります。それ自体は効率的だし適解も出せるのでいいのですが、自分の準拠枠以外を柔軟に取り入れる謙虚さが失われる気がしています。物事には利点があれば弊害もあるわけで、それこそ「ふたつよいことさてないものよ(河合隼雄)」です。人のふり見て我がふり直します。

自分の臨床に役立つ有益な時間となりました。正社員として病院臨床に携わっていると3日間あてることが難しかったため、個人事業主になった今年は参加のチャンスでした。学びを現場に還元していきます。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。