ゆっても公認心理師は国家資格なので、一定の信頼を寄せるに値する資格です。一方で「質にばらつきがある」と感じる方が多くいらっしゃるのも事実です。何故なのでしょうか。
まずは似たような資格である、臨床心理士との比較で考察します。
臨床心理士
臨床心理士は心理系大学院を修了(=臨床心理士として人前に出る訓練)していないと取得できない民間資格です。正確に言えば、資格が発足した1988年から1997年までは現職の心理職であれば取得可能だったので、必ずしも大学院修了生とは限らないのですが、今現在臨床に立つ臨床心理士は、訓練を受けたもしくは熟達した心理カウンセラーであると言えます。
また資格試験では、筆記のみならず面接もあるため、口述を通じて資格を有するに値する人物だと査定された人物であると言えます。
公認心理師
翻って、公認心理師はどうでしょうか。
公認心理師は2017年に誕生した国家資格で、制度発足時には、すでに現場で活躍していた心理職の人々が「経過措置」として資格を取得できる制度が設けられ、心理学以外のバックグラウンドを持つ人や、現場経験は豊富でも学術的な訓練が少ない人も取得するに至りました。そのため、専門性の幅が非常に広くなり、玉石混合と感じる人が多くなったのです。
現在はこのような状況ですが、例えば30年後では、公認心理師への信頼度は今以上に高まっているはずです。それは、経過措置制度で資格取得した人でも、実力がある人は生き残り、そうでない人は淘汰されているからです。
また2022年以降は受験ルートの主が変わり、4年生大学で所定(心理学系)の25科目修了+大学院で所定の10科目を修了もしくは認定施設で2年以上の実務の経験者となります。大学院2年間の臨床心理士以上に心理学に携わった公認心理師が多く誕生してきます。
心理カウンセラー
公認心理師の質がバラバラで玉石混合だという話ですが、そもそも心理カウンセラー業界自体が有象無象のカオスです。
心理職の名称が巷にごまんと溢れている理由は、「心理カウンセラー」という肩書きに名称独占権がないからです。何の裏付けがなくても名乗ってしまえばそこからあなたも心理カウンセラーです。
名称だけでなく、技法にも法的規則がありません。
心理士がよく用いる「心理療法」や「心理検査」等は、誰でも使うことができます。これらは業務独占の代物ではないからです。例えば医師には業務独占があり、医師以外が医業である外科手術や投薬治療を行うことは禁止されています。心理カウンセラー界隈にはこうした強固な枠がありません。
じゃあ心理療法や心理検査を誰もが使っていいかというと、倫理観点からNGだと言えます。これらは使用法や解釈によって毒にも薬にもなる専門性の高い代物ですので、訓練を重ねた心理カウンセラーがクライエントの福利のために安全かつ有効的に使用することが求められます。
臨床心理士や公認心理師は訓練を重ねてきた、もしくは臨床経験を有している心理カウンセラーです。一方で、こうした資格を持っていなくとも、腕のいい心理カウンセラーは世の中に数多くいらっしゃいます。
相談者側からすると、資格だけではその心理カウンセラーが信頼に足る人物か見極められません。残念ながら、実力のない臨床心理士や公認心理師がいるのもまた事実です。集められるだけの事前情報で精査したり、一度会ってみて自分の感性を信じてみたりしながら、試していく他ないです。お手間取らせてしまい申し訳ないです。ここらが日本で心理カウンセリングがスタンダードに広まっていかない、ひとつの大きな理由だと確信しています。
支援者側からすると、心理カウンセラーを名乗るのであれば、倫理観と技術力を持ち合わせ、絶え間なく研鑽し続ける覚悟を持つべきです。自戒を込めて言いますが、それがなければ名乗る資格がない(資格な話だけに!…失礼しました)と、私は思います。
心理臨床は紛い者が通用するほど生半可な世界ではありません。異業種から参入してきた私が言うのだから間違いありません。語弊を恐れずに言えば、会社員やってるほうがどれだけ楽だったか。一方で、やりがいや貢献が目に見えやすい仕事でもあります。私自身は多くの臨床に立ちながらも、今まで一度も嫌になったり飽きたことがないです。
相談者の福利を目指す支援者であること、そうした支援者に多くの相談者が出会えることを祈り、私は私の臨床に全力を捧げたいと思います。
