マネジャー特有のメンタルヘルス対策があります。なぜならばマネジャーはメンバーとは違う業務(ストレスと言い換えてもいいでしょう)を担当するからです。

マネジャーとメンバーの違いは、マネジャーが組織全体を管理する立場であるのに対し、メンバーは個の最上を目指す存在であることです。マネジャーはメンバーをマネジメントする役割を担い、組織のビジョンや経営理念に基づいた成果を上げるために、次のような業務を行います。

  • 人員配置や能力開発、モチベーション管理などを通じて組織全体を導く
  • 成果を上げるために適切な役割分担を行う
  • メンバーの人材育成、評価、フィードバックを行う
  • メンバーの成長をサポートする

これは私の嗜好性ですが、プレイイングマネジャーが好きではありません。個人目標を持ちつつ全体目標もこなすって、どれだけ器用な人でもハードワークです。人手が足りないからという組織の台所事情はわかりますが、それはリーダーまででしょう。人や組織のマネジメントは片手でできる仕事じゃないです。

さて本題に移りましょう。マネジャーに特に必要なメンタルヘルス対策です。

セルフケア

時間管理です。シンプルに業務量が増えるため、優先順位付けや、自分がやる事/他者に任せる事など、タスクマネジメント術をより意識しましょう。その際に重要になるのが自分のリーダーシップ軸です。キャリア理論でいえばPM理論やSL理論がありますし、アメリカの心理学者ダニエル・ゴールマンが提唱した6種類のリーダーシップスタイルも参考になるでしょう。リーダーシップなんてごまんと種類があるわけで、優劣じゃなく、自分のキャラクターやメンバー特性で決めるものです。言葉で周囲に宣言し、ブレずに実行し、修正があれば都度説明する。相互理解が進めば時間管理も容易になってきます。

休息の確保です。業務量をこなすありきではなく、休息ありきの時間管理に変えましょう。おすすめしたいのは、睡眠時間の確保からタイムスケジュールをひくことです。睡眠の重要性はいわずもがなでしょう。充分な休息をとらないと脳や身体が回復せずにパフォーマンスが落ちるだけで、ものすごく非効率です。

サードプレイスをつくります。仕事/家/自分に戻れる場所や時間、の3点で生活するとメンタルが安定します。ストレスコーピングでいえば、マインドフルネスやメディテーション(瞑想)はストレスを軽減し、集中力を高める方法として有効です。マネジャーは瞬時に多くの問題を処理する必要があるため、冷静さを保つために役立ちます。また、適度な運動や食生活の改善など身体のケアも重要です。フィジカルヘルスがメンタルヘルスに強く影響を与えるため、心身両方のバランスを意識することが推奨されます。

ラインケア

メンタルヘルスの知識を入れます。自分にもメンバーに対しても、です。早期発見・早期対応を徹底し、リタイアするほどに重症化させないことが大切です。タスク割り振りや人員再編などの追加業務は避けたいですよね。

支援ネットワークを築きましょう。社内での相談先はもちろん、社外にも話のあうカウンセラーやコーチをみつけておくこと。定期的なセッション(調子がいい時なら半年に一回だっていい)を行いたいです。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。