マネジャーやファシリテーターなど、人や場をリードする役割では、質問力が必要になってきます。

質問力とは、メンバーとのコミュニケーションを円滑にし、適切なフィードバックやサポートを提供するために効果的な質問をする技術です。適切な質問はメンバーの思考力を育て、問題解決能力を引き出し、自己成長を促進させます。

営業職が取引先とやり取りする際も活躍するでしょう。先方のニーズを聞き出したり、次のアクションを先方主導で自己決定させたり。こう書いているうちに、誰にとっても必要な力なんだなと思えてきました。

臨床心理士が行うカウンセリングでも質問力は大きな力を発揮します。大学院時代に教授が行うカウンセリングに陪席し、質問の威力をまざまざと見せつけられました。その投げ掛けで場の空気がガラリと一変するんです。医師は薬とメス、心理士は言葉が武器だといわれる所以を知りました。心理士は対話によってクライエント自身が持つ豊かなリソースを最大限に引き出し問題解決や困難緩和に繋げるため、質問力がとても重要になります。

質問力を高める技法

Chat-GPTに質問したら、たくさんの技法を教えてくれました。全ての技法それぞれにメリデメがあるので、TPOで使い分けることが重要です。

CLOSEDクエスチョン、OPENクエスチョン

CLOSEDクエスチョンはYES/NOで回答できる質問です。言葉数が少ない人に対して有効で、緊張状態をほどく口火としても効果的です。OPENクエスチョンは自由な回答を求めて本人の深考を促します。

ソクラテス式質問法

相手の回答に基づいて次の質問をし、深く掘り下げていく手法です。これにより、相手は自分の考えをより深く検証することになります。信頼関係を築いたあとで行わないと、詰問されている印象になるので注意しましょう。例:「なぜそう考えたのですか?」「その結論に至った理由は何ですか?」

リフレクティブ・クエスチョン(反映的質問)

相手の発言や行動を振り返らせる質問をします。相手に自分の行動や思考パターンを再評価させ、気づきを促します。例:「その決断に対してどのように感じましたか?」

未来志向の質問

相手の目標やビジョンについて質問し、未来に向けてのモチベーションを引き出します。例:「このプロジェクトを成功させるためには、次にどんなステップが必要だと思いますか?」

解決志向の質問

問題の原因ではなく、解決策に焦点を当てた質問です。例:「どんな方法でこの問題を解決できると思いますか?」

感情を探る質問

相手の感情に気づき、サポートを提供するための質問です。例:「この状況に対してどのように感じていますか?」

質問力を発揮する際の留意点

技法の前に人としての基本姿勢です。策士策に溺れないように気をつけましょう。まずは傾聴の姿勢からです。相手の発言を遮って話さないとか、相手の発言を評価せずに受容してから自分の意見を伝えるとか、他者へのリスペクトを行動で示しましょう。上から目線や舐めた態度の人と、みなさんはしゃべりたいですか?

傾聴の姿勢を持つ:質問をする際、相手の話にしっかり耳を傾け、適切なタイミングで質問することが大切です。

ジャッジせずに質問する:質問が相手を批判的に捉えさせないよう、ニュートラルなトーンで行います。

タイミングとバランス:あまりにも多くの質問をすることは負担になるため、適切なタイミングを見極めることが重要です。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。