教育における指導方法にティーチングとコーチングがあります。生活していると指導をしなくてはならない場面が必ず出てきます。生活では子どもに対してものを言うのがそうですし、仕事で言えば後輩が入ってきた、育成担当になった、リーダーに職位が上がった、プロジェクトマネジャーに任命されたなど、枚挙に遑がありません。

私には苦い経験があります。会社員時代、初めてチームを持たせてもらった27歳の時、メンバーや後輩の指導をすることになり、マネジメントやらリーダーシップやらの書籍を読んだり研修に参加していました。指導法としての「コーチング」を知り、そこからコーチングばかり使うようになると、メンバーからお叱りを受けたのです。「がっつさんは何も教えてくれない。どうしていいか分からないから尋ねているんですけど」

ティーチング(教えること)とコーチング(引き出すこと)は、状況に応じて使い分けることが重要です。それぞれの手法には異なる特徴があります。以下、ChatGPTを参照しながらの解説です。

ティーチング

ティーチングは、知識やスキルを伝えるための「指導・説明」を行うプロセスです。以下の状況で効果的です。

  • 未経験や知識不足の段階:後輩がその業務やスキルをまだ知らない場合、具体的な方法や手順を教えることが必要です。基本的な考え方や業務の進め方を明確に指示する段階です。
  • 標準手順やルールがある場合:業務に決まったプロセスやルールがあり、それを正確に理解し、従う必要があるときにはティーチングが適しています。
  • 期限や結果が求められる場合:短期間で成果を出さなければならないとき、効率的に指導することが求められます。後輩が迷わないよう、明確な指示を出すことが重要です。

例:新人が業務のやり方を全く知らない場合、「この業務はこのようにやる」「この手順に従って進めてください」と具体的に説明して指示する。

コーチング

コーチングは、質問を通じて相手の思考や行動を引き出し、自己解決力や自己成長を促すプロセスです。以下の状況で効果的です。

  • ある程度経験や知識がある場合:後輩が業務に慣れ、基本的なスキルは持っているが、自己改善やより高度なスキルの向上が求められる段階。
  • 自立性を高めたい場合:後輩が自分で問題を解決できる力をつけることを目指す際には、質問を通して考えさせ、自ら答えを見つける過程を支援します。
  • 新しい視点や発想が必要な場合:クリエイティブな解決策や、新手法を試す必要がある場合には、後輩に考えさせることで主体性と創造力を伸ばします。

例:後輩が業務の進め方に困っている場合、「この状況であなたならどう進めますか?」「どんな解決方法が考えられますか?」と問いかけ、後輩のアイデアや判断を促す。

タイミング

最初はティーチングによって基礎を固め、その後、コーチングを通じて自己成長を促すのが理想的です。また、短期間で成果を求められる場面ではティーチングが重要で、長期的な成長を見据える場合にはコーチングによって自発的な学びを引き出すことが求められます。ああ、27歳時の私に教えてあげたい。。。

コーチングを使う際には、コーチングを使う目的や背景を本人に伝えたいですよね。「自走できるだけの土台が整ったと評価しているから、ここからはコーチング使っていくよ」など。ティーチングとコーチングについても説明してあげたい、なぜなら新人さんはそんな技術があること自体を知らないだろうから。そうすれば私の苦い経験のような事態を回避できるのではないでしょうか。信頼関係は言葉と姿勢で築かれます。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。