みなさんは「子ども」について、どこまで理論的に理解していますか?我々は子ども時代を経て大人になっているので、自身の経験から理解している部分はあるものの、子ども全員がみなさんと同じではありません。理論と経験の二軸から理解しようとすると、真相に近づけるはずです。

心理学でいうと、発達心理学が役に立ちます。発達心理学は、生物の一種として生まれた「ヒト」が、社会や文化をまとった「人」として、他者と関わりながら育ち、育てられ、次の世代を育み、死に至るまでの、こころの発達過程を考究する学問です。

例えば、発達心理学者ピアジェは、自身が唱えた認知発達理論において、小学生(特に7〜11歳あたり)は 「具体的操作期」 の段階だと考えました。この時期の子どもは、まだ抽象的な思考は苦手ですが、目で見える・体験できることを通じてぐんぐん学び、社会性や自己主張も伸びていく時期です。その特性を踏まえると、例えばアクティビティなどの関わり方はこんなポイントになるでしょう。

1. 「自分でやった」感を大事にする

  • 成功体験が自信を育てる
    •  例えばスイカ割りでは「目隠ししてもここまで行けたね」と達成感や出来た事を口に出して褒める。
  • 結果より「努力・工夫・参加」を評価する
    • 「最後までやりきったね」「友だちを応援してたね」など。

2. ルールは明確かつ短く伝える

  • 具体的な言葉で説明する
    • 例えば花火する時は「あそこで」ではなく、「この黄色いテープの内側だけ」と伝える。
  • ルールの理由も短く添えると納得度アップ
    • 「安全のために」「みんなが楽しくできるように」など。

3. 社会性を伸ばす場面をつくる

  • この時期は「仲間と一緒に」や「役割分担」が楽しい
    • 鬼ごっこで鬼役や救済役など、役割を交代制にして全員が経験する。
  • 他の子と協力して達成するミッション形式も効果的
    • 例えば、「みんなで◯分以内に隠した宝物を全部探す」。

4. 選択肢を与える

  • 自分で決めたことは責任感と満足感が高まる
    • 「これをやる?」ではなく「AとBどっちがやりたい?」と聞くことで主体性が育つ。

5. 感情の揺れには短く共感+切り替え

  • 小学生は感情の波が早く、泣いたかと思えば数分後に笑っていることも
    • 「悔しかったね」「びっくりしたよね」と短く共感して、すぐ次の楽しい活動に誘導する。

6. 驚きや発見を仕込む

  • 「予想外」は記憶に残りやすい
    • 花火の最後にサプライズ演出、スイカ割りの際はスイカの中に小さなおもちゃを忍ばせる…など、好奇心を刺激する。

7. 安全基地の役割も意識する

  • 慣れない場所や知らない子との活動では不安が出やすい
  • スタッフが安心できる存在だと、子どもは思いきって遊びに集中できる
    • 明るい声かけ・名前を呼ぶ・失敗しても笑顔で受け止めるなどの振る舞いを心がける。

自分の経験値や直感だけではなく、理論に即した対応も試してみましょう。関わり方を変えるだけで、驚くほど反応が変わりますよ。子どもの成長を後押しする存在でありたいですね。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。