動物に触れて気持ちが和らぐ経験をしたことがありますか。

落ち込んでいた時に、猫が寄り添ってくれた、犬と散歩に出たら心が軽くなった、、、そうした体験は決して偶然ではありません。心理学や医学の研究からも、動物との関わりが心身に良い影響を及ぼすことが数多く報告されています。この動物との癒しの関係性を、医療や福祉、教育の現場で意図的に取り入れたものが「アニマルセラピー」です。ちなみに私は犬猫よりもイグアナに癒されます。

アニマルセラピーには大きく分けて二つの形があります。ひとつは「動物介在活動(AAA)」と呼ばれるもので、動物とのふれあいを通じて気分を和らげたり、楽しみを提供したりする活動です。もうひとつは「動物介在療法(AAT)」といい、専門職が治療的な目的をもって動物を用いるものです。例えば、心理士や作業療法士が犬との活動を通して、不安の軽減や社会的スキルの向上を支援する、といった形です。どちらも「動物と人との関わり」が核にありますが、そのアプローチの仕方や目的に違いがあります。

心理学の視点から見ると、アニマルセラピーにはいくつかの理論的な背景があります。まず注目されるのが「愛着理論」です。動物との関わりは、安心や安全をもたらす「安全基地」の役割を果たします。犬や猫がそばにいることで、不安が和らぎ、自分らしく振る舞えるようになるのです。次に「ストレス理論」。研究では、犬をなでるとストレスホルモンであるコルチゾールが低下し、代わりに幸福感をもたらすオキシトシンが分泌されることがわかっています。つまり、身体レベルでのリラックス効果が裏付けられているのです。さらに「自己効力感」の観点からも説明できます。犬の世話や散歩を継続することは「自分にできることがある」という実感を生み、抑うつ感の軽減にもつながります。そして、動物との関わりは言葉に依存しません。非言語的なコミュニケーションが中心になるため、人とのやり取りが苦手な人にとっても安心感を得やすいのです。

実際の臨床現場でも、その効果は具体的に観察されています。たとえば高齢者施設では、セラピードッグが訪れると普段は無表情で過ごす利用者が笑顔を見せたり、自然に会話が生まれたりします。発達障害のある子どもが乗馬療法を通じてバランス感覚を養うと同時に、自分の気持ちを落ち着ける力を学ぶこともあります。精神科デイケアでは、動物を介して利用者同士が自然に声をかけ合い、孤立していた人が人間関係を築くきっかけになることも少なくありません。

もちろん、アニマルセラピーは万能ではありません。動物にアレルギーがあったり苦手な人には適さないこともあります。また、動物にとっても過度な負担がかからないよう配慮する必要があります。そのため、単に「癒されるから良い」という視点だけではなく、心理士をはじめとした専門職がクライエントの状態や環境を見立て、適切に取り入れることが大切です。

臨床心理士として感じるのは、アニマルセラピーは心理療法として大きな力を持っているということです。人が動物と共に暮らし、支え合ってきた歴史は長く、その関係性は私たちの深層心理にまで根付いています。動物の存在は、人に安心感を与える「他者」としての側面と、自分自身を投影できる「鏡」としての側面をあわせ持っているのです。

まとめると、アニマルセラピーは動物との関わりを通して人間の心を豊かにする方法であり、心理学の理論や研究からもその効果が裏付けられています。動物は単なる「癒しの存在」ではなく、人と人とをつなぎ、自己を見つめ直す機会を与えてくれる大切なパートナーなのです。アニマルセラピーを通じて、人と動物の関係の奥深さを感じ取っていただければと思います。(本文はChatGPTの協力を得て作成しました)


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。