適応障害は、はっきりと確認できるストレス因子により、著しい苦痛や機能の障害が生じており、そのストレス因子が除去されれば症状が消失する特徴を持つ精神障害です。
罹患者数は受療患者数ベースでは、2008年:約41,000人 → 2017年:約101,000人(厚労省)と報告されており、9年間でおよそ2.5倍に増加しています。受療者は20〜40代に多く、特に20代後半にピークがあります。つまり、社会人10〜20年目までの働き盛り層が中心で、これは職場や人間関係、環境変化などのストレス要因が重なりやすい時期に比例します。成人の終生発症率は5〜21%とされ、身近な病気といえます。
心理士などしている私も、社会人2年目前半で罹患しました。正確に言うと診断を受けてなかったのですが、症状からすると明らかでした。退職という形でストレス因から離れ、自宅療養で数ヶ月かけて回復させました。
さて、今日の本題ですが、同じ環境で同じストレス(刺激)を受けて、適応障害になる人とならない人がいます。どこがどう違うのでしょうか。
結論から言うと、「ストレス要因そのもの」よりも、「その刺激をどう受け止め、どう対処するか」に大きく左右されるといわれます。
対処スタイル(コーピング)
問題に向き合って解決しようとする人や、気持ちをうまく切り替えられる人などは、適応障害になりにくい傾向があります。一方で、「自分の中に抱え込む」「逃げるしかない」となりやすい場合は症状化しやすいです。
ストレス耐性・回復力(レジリエンス)
生まれ持った気質や、過去の経験によって「困難に対処する力」に差があります。失敗や逆境から立ち直る経験を積んでいる人は、ストレスに対する柔軟さを持ちやすいです。
支援の有無(社会的サポート)
家族・友人・職場などの人間関係で支えがある人は、ストレスがあっても抱え込まずにすみます。孤立しやすい環境にいると、同じストレスでもより重く感じられるでしょう。
過去の体験・背景
トラウマ体験や繰り返されるストレス経験があると、ストレスに敏感になりやすいです。逆に「成功体験」や「安心できる原体験」を持っている人は、揺さぶられにくいです。
文化・価値観
「弱音を吐けない」「頑張るしかない」といった文化や家庭環境は、適応障害のリスクを高めることがあります。柔軟に「助けを求めること」が許される環境は、発症リスクを下げます。
まとめると、同じような強いストレスを受けて、適応障害に「なる人」と「ならない人」の違いは、
- ストレスをどう意味づけるか(認知の仕方)
- どんな対処手段を持っているか
- 支えてくれる人や環境があるか
といった点に集約されるかと思います。運やタイミングみたいな、自分では統制できない外部要因も要素に加わります。つまり、「なる/ならない」は個人の弱さや強さという単純なものではなく、「環境と個人の相互作用」の中で決まると言えそうです。
私自身は20数年をかけて、ストレスの認知の仕方、多種多様なコーピング、レジリエンスなどを研鑽してきたように感じます。だからといってこの先で再び適応障害に罹患しない保証はありません。微細なストレス反応を無視しない、日々をご機嫌に過ごすことを目標にするなど、予防行動を心がけています。それでも罹患したら、休んで、治せばいいだけです。臆病になりすぎず、ノーガードでもない姿勢をとりたいと思います。