「やる気が出ない」は、こころの自然な反応です

年末年始の休みが終わり、日常が戻ってくるこの時期。「仕事に身が入らない」「集中力が続かない」「身体が重たい」と感じる人は少なくありません。

こうした状態に対して、「もう社会人なんだから」「気合いを入れ直さないと」と自分を叱咤してしまう方も多いのですが、臨床心理士の立場からお伝えすると、正月明けの不調は、ごく自然な心身の反応です。

人のこころと身体にはリズムがあります。長期休暇中は、起床・睡眠時間、思考の使い方、緊張のレベルが、仕事モードとはまったく異なる状態になります。そこから急に通常運転に戻そうとすれば、エンジンがかかりきらないのは当然とも言えます。

仕事モードへの切り替えは、「スイッチを入れる」ものではなく、「フェードインする」ものだと考えてみてください。たとえば仕事始めの数日は、成果を出すことよりも、全体を把握すること、感覚を取り戻すことを優先してみましょう。メールを整理する、タスクを書き出す、今日できたことを3つ挙げるなど、こうした小さな達成感が自己効力感を回復させ、再び集中力を引き上げてくれます。

また、こころの状態は身体の影響を強く受けます。

やる気が出てから身体を動かすのではなく、身体を動かすことで気分が後からついてくることも多いものです。朝の起床時間を一定にする、出社前に数分ストレッチをする、昼休みに外の空気を吸うなど、ちょっとしたルーティンワークを取り入れてみてください。

新年早々は、「今年こそ頑張らなければ」という想いが強まりやすい時期でもす。しかし、力を入れすぎると、かえってこころはブレーキを踏んでしまいます。そんな時は、「今は助走期間」「今日は7割で十分」と、自分にかける言葉を少し緩めてみてください。思考が変わると、こころの緊張も和らぎます。

もし、気分の落ち込みや不調感が1〜3週間以上続く場合や、「いつもの自分と違う感じ」が抜けないときは、早めに誰かに相談することも大切です。こころのケアは、問題が深刻になってからではなく、違和感の段階で行う方が回復もスムーズです。

新しい一年の始まりだからこそ、無理のないスタートを。仕事モードへの切り替えも、自分に合ったペースがあっていい。そうした視点を、ぜひこの時期の自分自身に向けてみてください。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。