今年も看護専門学校で発達心理学の教鞭を取ることになった。講義内容は毎年ちょっとずつアップデートしている。今期は幼児の遊びについて、昨年よりボリュームを持たせることにした。
子どもにとって遊びが発達の観点で非常に重要とされるのは、遊びが単なる余暇活動ではなく、発達そのものが生じる中核的な営みだからである。遊びの最中、子どもは自ら関心を向けた対象に注意を集中し、試行錯誤を繰り返しながら状況を理解し、必要に応じて行動を修正していく。そこでは考える力や見通しを立てる力、衝動を調整する力といった実行機能が自然に働いており、しかも「やらされている学習」ではないため、内発的動機づけに支えられた深い学びが生じやすい。
また、遊びは感情の発達にとっても重要な役割を果たす。思い通りにいかない経験や、失敗、勝ち負けといった出来事は、子どもに悔しさや怒り、喜びなど様々な感情をもたらすが、遊びの場はそれらを比較的安全に体験し、回復することができる環境である。こうした経験の積み重ねを通して、子どもは自分の感情に気づき、折り合いをつける方法を学んでいく。これは後のストレス耐性や情動調整力の基盤となる。
さらに、遊びは社会性の発達とも密接に関わっている。ごっこ遊びや集団遊びの中では、役割を分担したり、相手の意図を推測したり、ルールを守る、あるいはルールをめぐって交渉するといったやり取りが自然に生じる。これらは大人から言葉で教えられる社会的スキルとは異なり、身体感覚や感情を伴って体験されるため、実感を伴った社会性として内在化されやすい。
加えて、遊びは自己感の形成にも大きく寄与する。遊びは基本的に子ども自身が「何をするか」「どのようにするか」を選択する活動であり、その中で工夫したり、失敗から立て直したりする経験を重ねることで、「自分にはできる」「自分が状況を動かせる」という有能感や主体感が育まれる。こうした自己効力感は、学習意欲や新しいことに挑戦する姿勢の土台となる。
このように、遊びは認知、情動、社会性、自己形成といった複数の発達領域を同時に、かつ統合的に育てる営みである。さらに重要なのは、遊びの内容そのものが発達段階に応じて自然に変化していく点であり、子どもはその時点での発達水準に見合った課題を、遊びという形で自ら選び取っているとも言える。だからこそ、遊びは子どもにとって不可欠であり、発達を支える最も自然で本質的な環境だと考えられている。
遊びの重要性は、発達心理学の知見だけでなく、国際的にも明確に位置づけられている。国連が採択した「子どもの権利条約」第31条では、子どもが休息し、余暇をもち、年齢にふさわしい遊びやレクリエーションに参加する権利が保障されている。遊びは「あると望ましいもの」ではなく、子どもが健やかに育つために守られるべき基本的権利であるという認識が、国際社会において共有されている。
多くの人が実感しているはずである。自分自身の幼少期を振り返ったとき、遊びの中にいかに多くの学びが含まれていたかを。「よく遊び、よく学べ」という言葉は、決して比喩ではなく、本質を突いた表現である。大人にできることは、子どもを失敗から遠ざけることではない。大事故にさえならなければ、失敗してもやり直せる環境を整え、安心して挑戦できる心理的安全性を確保することなのである。