巨人の星は星飛雄馬、愛知の星は諸星大(スラムダンク)、さて中年の星は。

中年は何歳か

中年とは何歳くらいだろう。中高年と言われたら幅の曖昧さが一気に増す感じがする。高齢者は65歳以上が一般的かもしれないが、定年退職や年金支給が70歳になったらどうだろう。かつては60歳が高齢者と言われていた。発達心理学においても、時期・期間の呼称や区切りの年齢は学者によって定義が異なる。

生涯発達理論で中年期または中年という表現を用いたのはハヴィガーストとレヴィンソンである。

ハヴィガーストは人間の発達段階が全部で6つあるとした。すなわち、幼児期~早期児童期、中期児童期、青年期、早期成人期、中年期、老年期である。彼は各発達段階における発達課題を示した。発達課題とは身体的成長、社会的・文化的圧力、パーソナリティから起こるものであり、最適な時期に発達課題が達成されると健康で幸福な社会的成長を促すという見地である。なお、各段階の年齢幅は規定されていない。

レヴィンソンは青年期から老年期までの発達段階を唱えた。結構細かい。
成人への過渡期(17~22歳)→おとなの世界へ入る時期(22~28歳)→30歳の過渡期(28~33歳)→一家を構える時期(33~40歳)→人生半ばの過渡期(40~45歳)→中年に入る時期(45~50歳)→50歳の過渡期(50~55歳)→中年の最盛期(55~60歳)→老年期への過渡期(60~65歳)→老年期(65~80歳)→高齢期(80歳~)
個人と社会の関わりで生み出される生活構造こそ人生の基本パタンであり、仕事・家族・対人関係・余暇・地域社会・宗教等について重要な選択が行われる過渡期と安定期が相互に訪れて、生涯発達を推し進めると考えた。

厚生労働省 健康日本21は中年期40〜64歳と定義している。個人的にはここら辺が妥当かなと思う。

中年の危機

中年期は自身および自身を取り巻く環境の変化に直面しやすい時期である。この変化がストレスの要因となり「中年の危機」と呼ばれる特有の心理的危機が生じることが知られている。あらわれがちな臨床心理的症状としては、うつ病や不安障害、アルコール依存症、出社拒否などの職場不適応症などで、日常生活の営みを脅かす危険性を孕んでいる。加齢による身体的変化、家族ライフサイクルの変化、職場での変化などに注意したい。

メンタルクリニックに訪れる40歳前後の方になんと多いことか。人間は摂理には逆らえないため、変化を許容し柔軟に対応する姿勢が必要になってくる。

例えば大企業に勤めていて、出世で社長まで上り詰める目標をもったとする。30代半ばで限界が見えてくる。見えてきた時にどうするか。意固地にその場で社長を目指し続けるのが一番キツイ。限界の中での最高職位に照準を落とすとか、規模は小さくても社長をやれる子会社に出向するとか、起業して社長になるとか。

例えば趣味でサッカーをしていて、社会人リーグへの昇格を目指していたとする。30を超えるとプレーイメージに身体がついてこなくなる。その時にどうするか。精神的支柱としてチームに貢献するとか、草サッカーレベルに落として純粋にサッカーを愉しむとか、コーチ職を目指してみるとか。

これらは悲しい出来事だろうか。私はそうは思わない。「生き続けていく」ことを人生の目標としたとき、変化への対応こそが一番尊い行動だと信じている。

中年の星

歳をとっていいこと、それは思慮深くなれることだと思う。色々経験してきてある程度のことは対応できるという余裕が備わってくる。孔子は「60にして耳に順う」、つまり人は60歳になって初めて人の意見に素直に耳を傾けられるようになると言っている。若者にはできないことができるようになる。

周囲や自身の変化を無視して、頑なに今までのやり方に拘泥するとロクなことがない。曲げ(られ)ない自分の価値観を認めつつ、変化を取り込み補強する。それは逃げではない。心身ともに健康で生き続けるための闘争活動である。

人生は常に上々だ。誰もが中年の星になれるんだ。

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cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。