「3密」が流行語大賞に選ばれ、氷川きよしが限界突破し、仕事や飲み会はオンラインで行われるようになった2020年秋に、大学院時代の仲間を誘ってピア・スーパービジョングループ「OTL」を立ち上げました。

ピア・スーパービジョンとは何か。まずはスーパービジョンの説明から。スーパービジョンとは一般的に、経験や知識を持つスーパーバイザーがバイジーに対して行う、実践に則した振り返り研修のようなものを指します。技術の研鑽や学習、現場で受けるこころの傷の自己回復などが主たる目的です。そして本題のピア・スーパービジョンとは、上下関係の生じない仲間や同僚間で行われるスーパービジョンのことです。臨床心理士には定期的なスーパービジョンの実施が推奨されています。

名称ですが、Online Teamlet Learning の頭文字をとってOTLとしました。チームレットとは3〜4人の小分けの集まりを意味します。私たちの学科長であった亀口憲治教授が「これからの時代は大規模ではなく、に素早い動きが取れる小規模集団が注視される」と、しきりに用いていた用語を拝借しました。

またOTLは、Over The Limit(限界を超える)を意味する略語でもあります。私は今44歳で人生経験はそこそこしてきましたが、心理の専門職としてのキャリアはピカピカの一年生です。自分の限界は自分で決めず、自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えようとする、元リクらしい思考でやっていこうと思ってます。

開催形式はオンラインが基本です。感染症が落ち着いたら、オフ会のような位置付けで対面開催の回は設けますが、この先の臨床業務はオンライン抜きには成立しなくなるでしょう。そして臨床心理×オンラインは、未だにどこでも暗中模索の状態です。OTL活動を通じて、オンラインの得意/不得意を体感していきます。

数回実施して感じたピア・スーパービジョンの良さは、肩肘張らずに率直に自分の感じたことや意見を言い合えることですね。スーパービジョンではどうしても「教えを請う」姿勢が生まれます。それはそれでとても大切なことなんですが、互いの臨床の日々の労い合いだとか、プチ同窓会のような雰囲気で生まれる新たな視点だとか、同僚とでしか出来得ないセッションがここにはあります。

ひと月半に一回の実施ペースが丁度いいと感じています。無理をせず、環境や状況の変化にも柔軟に対応しながら、ゆるく永く継続していきたいです。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。