会社員時代、2つの部署を兼務していました。私、マルチタスクは好きなんですけど、それでも昨年の心理職一年目での4箇所での仕事は非常に疲れました。「切り替え」って、いつもは何気にやっているけど、結構大変な作業なんだなと。

リモートワークになり、家という1箇所で、家庭人と仕事人の切り替えが上手くできなくて、メンタルを崩された方がいらっしゃいまして。

意識だけで切り替える難しさ。

曰く、通勤電車に揺られる時間が、家事と仕事を切り替えるスイッチになっていたと。確かに、家と職場のように、視界に映る景色が変われば脳も別物と認識しやすいわけで。切り替えは意識だけではなく、五感を動員したほうがしやすいです。

ひとつの空間で、この時間は仕事人、ここからは家庭人と、パキッと分けるは難しいです。PC越しに視界に入る洗濯物、子どもや宅配便はこちらの都合お構いなしに訪ねてくるし、洗い物の最中でも仕事の電話はかかってきます。役割やタスクがぐちゃぐちゃに入り乱れて同時進行すれば、混乱するのは当然だし、疲労度は倍増していきます。だから、分けちゃいけないんだと思います。

きっちり分けようとしないこと。前提が変わったんですね、家庭人と仕事人を分ける時代は終わったのだと。家庭と仕事をじわーっと織り交ぜるイメージ。このとき大事なのは、ちゃんとやれなくてもいいや、と意識に緩みをもたすこと。まあ、ちゃんとやらなきゃいけないんですけど笑、前人未到の難しいことをやろうとしている最中なのだから、いきなり満点はとれないよと自分に甘くなりましょう。

変化や新しい様式を取り入れることは大変なことです。スマホのメーカーを代えたら操作に慣れるまで時間がかかります。でも、なんとか順応するものです。頭と体を動かしていたらいつしか慣れるものです。リモートワークも、これがこれからのスタンダードと思えば、やらない選択肢はないのです。昔のように家庭人と仕事人を白黒法で二分することはもうできないことを前提にしましょう。

元に戻ることは不可能です。過去に囚われず、徐々に徐々に、新様式へのそれなりの順応を目指したいものです。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。