勤務していたメンタルクリニックには、医師、看護師、事務員、心理士が在籍していました。ひとりの患者さんに対して全職種が協同して関わっていくのですが、やはり立場や役割が違えば視点や言葉も変わるわけで、多職種連携は一筋縄ではいかない印象を持ちました。

お互いの役割と視点を理解しあい、尊敬しあうことが肝心です。一人がそれを拒否したらチームは成り立ちません。そっぽを向く構成員が出ないように、トップは集団をマネージしなければなりません。メンバー同士もコミュニケーションの質量を高める努力が必要です。

リッツ・カールトンのファーストクラスカードを思い出しました。事務員などは特に患者さんから直接的に「ありがとう」をもらいにくい分、専門職同士で労い感謝しあう文化をつくれるといいですね。今はこの取り組みのシステムやサービスが多くの会社からリリースされているけれど、形だけではダメで文化として根付かせなければ意味がない。自分の城を築いた時に役に立ちそうな気づきでした。

社員同士で感謝を伝え合うザ・リッツ・カールトンのファーストクラスカード 離職率を減らす・改善する!社員のやる気を引き出す社内制度 | 社長の教室│高良高公式ブログ日本をはじめ世界中にフランチャイズを持つ、非常に有名な高級リゾートホテル「ザ・リッツ・カールトン」そんなリッツ・カールトンwww.president-school.com

多職種連携について他の職場との比較でいうと、大学附属の総合病院では、医療従事者同士の関係性はフルフラットな印象です。全ての大学病院がそうではなく、私の勤務先の医師陣のスタンスなのだと思います。心理士として全職種からリスペクトされていると感じるし、私はそうしてくれる皆さんをリスペクトできます。専門性を活かして患者さんの最大福利のために注力できる環境に感謝しています。

特別養護老人ホームで職員相談員としても働いているのですが、この職場では一方的に職員の皆さんから心理士として一目置かれているような気がします。先任の心理士さんが素晴らしい方だったからなのですが、ありがたいやら恥ずかしいやら申し訳ないやらの感情でいっぱいです。私には到底できない介護や福祉の仕事に従事する皆さんのために、心理の専門家として出来る限りの支援をしています。

場所ごとにそれぞれの文化があります。どの形が正解というものはありません。その環境下での最適な多職種連携を行なっていきたいと思っています。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。