児童から高齢者まで幅広い年代の患者さんが訪れ、且つ院長の意向で導入検査をきちんと行うクリニックだったので、様々な検査を実施する機会に恵まれました。具体的には【発達系】WAIS、WISC、AQ、PARS-TR、ASD-R【認知系】ロールシャッハ、HDS-R、MMSE、ADAS【性格系】MMPI、P-Fスタディ、S-HTP、バウムテスト、クレペリン作業検査 など。この経験は私の財産です。

検査を実施して思ったことは、本番に勝る練習はないということ、所見まで書けて一人前であるということでした。

大学院時代の二年間で、各検査の理論を学び手順を覚えました。検査協力者を募り対面での実施練習も沢山しました。が、やはり練習は所詮練習でして、練習という準備があるから本番に臨めるわけですが、本番の真剣さはまた別物という印象でして。本番を数やり込んでいくうちに開けてくる世界があり、深い心技体は現場で鍛えられていくものなのだなと実感しました。

所見を書く経験を積めたことが嬉しかったです。学生時代は2枚しか書けませんでした(実際にクライエントに実施した検査でないと書きづらいため)。検査結果を出して、解釈して、それを被検者や関係者に見せる用に文章化する……。何度も頭を悩ませました。結果を書くだけなら簡単だけど、本人の困り事との関連性やアドバイス、それを心理士の立場から文章にするのは至難でした。

昨年はこの他に別の勤務先である大学病院で、高次脳機能を調べるWMS-R、Cognistat、Moca-J、FAB、CDR、パレイドリア、TMTなどの検査を実施しました。臨床心理士として他の心理系資格との差別化になりうる「心理検査がとれる」状態に、少しだけ近づけたのかなと思っています。

検査SVを受けると自分の未熟さに涙がでてきますが、コツコツ粘り強くやり続けていきます。精進します。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。