「心理面接」とひとことに言っても様々な形がある。相談主や目的が変われば、もはや別物と言ってもいいくらい違ったりする。
病院やメンタルクリニックで行われる心理面接
相談主は、病院やクリニックに援助を求める程に困難を感じている状態の患者である。その困難に対して、寛解や軽減を目的とした支援が行われる。
病院やクリニックでの心理面接は、医師や看護師との連携によって成り立っている。医師は診断−治療モデルに則り、何かしらのこころの異常に病名を診断して、主に投薬によって治療を行う。看護師は“人を看る”という視点で観察し、判断をして、患者の生命と生活を支える。 市原真(ヤンデル)先生は著書の中で、「維持業務においては、医者など看護師の足元にも及ばない」と、その専門性を敬意をもって表している。心理士は査定−援助モデルに則り、異常などの問題だけではなく、豊かな面つまり生育歴や健常な部分も含めた個人の生活の理解に基づき、より適応的に生きることを援助する。それぞれの役割の中でそれぞれが患者の最大福利に帰するよう努めている。
職員相談として行われる心理面接
これが企業や組織の職員相談として行う心理面接では様相が異なる。相談主の心理面接への動機は病院やクリニックにおけるそれとは限らず、状態としては健常から中程度まで様々である。相談内容も、自分のこころの状態に限定されず、仕事について、キャリア、職場問題、家族、人間関係など裾野が広い。相談主が何を求めているのか、その見極め(つまりアセスメント、査定である)をどれだけ短時間でより的確にできるかが鍵となる。
心理面接では、こころの支持だけではなく、組織や生活における適応行動の具体的な指示・アドバイスが求められるケースもある。一般的に心理相談とは非日常空間・時間の中で展開されるのだが、あえて日常業務の延長上で行う場合もある。もちろん心理士が行う職員相談なので、知識理論のベースは臨床心理学や精神医学なのだが、一般常識的な見解を呈することもある。通常の心理面接において心理士は身の上のことを明かさない匿名性の法則があるが、職員相談の場面では自分自身の経験談や主観的意見が必要になる場合もある。原理原則を守りつつも、柔軟に対応することが、職員相談の最大福利に通ずる行為だと認識している。
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違いについて書いてきたが、相談主が何かに困っている、という点は同じである。だからこの場に救いを求めてやってきたのだ。心理士として寄り添う気持ちや姿勢は変わらない。
現在、いくつかの職場を掛け持ちしている。昨日は病院、今日は職員相談、明日はクリニックとやっていると、構えの切り替えがおかしくなる時がある。一年間こなして少しは慣れたけど。慣れが”なあなあ”にならないよう、気を引き締めたい。