心理検査とは、目に見えないこころの一部を、目に見える形にアウトプットしようと試みるものです。今年に入ってから「文章完成法」を扱う機会が増えました。

文章完成法は心理検査の一種で、投影法に分類されます。まず文章の頭部分(刺激文)が呈示され、被験者にはそこに続く文を書いてもらいます。書かれた反応文には、被験者の態度や信念、動機づけ、他の精神状態の徴候が表れます。

この検査は結果の解釈が難しいです。大学院の心理検査の講義でトレーニングを積んだのですが、昨年勤めたクリニックではとらなかったため、かなり錆ついていました。参考書や文献で改めて理解を深めています。

無意識か意識か

文章完成法の反応文が、無意識を表すか意識を表すかについては議論があります。まだ数回しか解釈を実施していない時点での印象ですが、私は文章完成法の反応は無意識も意識も両方出ると考えます。

無意識にも階層があって、一番深い無意識がポコんと言葉に乗って反応文に表れることは稀かもしれませんが、意識に近い部分の無意識なんかは、それとなく頭を覗かせているように感じます。

全く「ない」事は表に出てくることはないし、出てくるということは無意識にでも「ある」ことの証明である。千鳥の漫才ネタの「(ラーメン屋って)開いてる店は開いてるけど閉まってる店は閉まってる」理論と同じなのかなと。(…本当に同じか?笑)

形式分析と内容分析の両側面から解釈を施し、無意識であろうが意識であろうが、被検査者の中にあるどんなことが困りごとを引き起こしているのか、はたまた因果関係で考えない方がよさそうなのかなどを見立てます。

懸念点

文章完成法の解釈で気をつけなければならないことは、解答の歪みが生じやすいということです。防衛的な虚偽回答が含まれる場合があります。無回答(回答拒否)で提出される箇所もあったりします。どういう意図もしくはどのような意味がここに含まれているのか、被検査者の腕が試される場面です。

重層的な解釈にするためには、他の性格検査や知能検査をテストバッテリーに組んで、その結果や検査時の態度なども参考にしながら包括的に捉えることが必要です。単体使いの検査ではないなと感じています。逆に言うと、上記の懸念点を押さえておけば、被検査者の関心事やこだわり、パーソナリティなどのアセスメントにはもってこいの検査だと思われます。

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複雑怪奇なこころを心理検査だけで解釈するのは不可能です。その前提を構えながら、ほんの一部でも垣間見える領域を足掛かりにして、心理屋は困難の解消や緩和を共に目指していきます。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。