僕は男子高生だ。自分は発達障害なのではないか…と思う節があって、今日はメンタルクリニックに心理検査を受けに来た。検査を取ってくれる心理士さんは優しそうで安心した。

母親がついてきた。ひとりで行けるって言ったのについてきた。検査前の心理士さんとの会話にも同席している。過保護なんだよな。母親が「同席したい」と言った時、心理士さんが僕に「お母様が同席したいって言っているけど、貴方が決めていいよ」と聞いてくれたんだけど、嫌だとは言いにくかったよね、実際。心理士さんとの会話で聞かれて困ることは何もないので別にいいんだけどさ。

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2週間後、検査結果を聞きに来た。今日も母親は同席した。心理士さんの話では、どうやら僕は言葉に関する能力が得意らしい。まあ確かに言葉に関してわからないとか困ったことはないし、しゃべるのが苦手ということもない。気になっているのは指摘も受けた注意力なんだよね。忘れ物が多いし話をじっと聞き続けられない。

心理士さん曰く「今回の検査結果では、集中力や記憶力は悪くない結果だった。けど、単一課題に対してはそうだけど、複雑課題や注意の同時処理は判定できなかったので判らなかった」とのこと。注意力すべてが苦手というわけではないんだな。改善点や工夫点なんかも教えてくれたし、やれる限りで頑張ってみよう。

母親がウザいことを心理士さんに言ってた。注意力なくて優先順位付けが苦手だったら社長業ができないじゃないか、だって。父親が社長だからって、僕も社長になる必要はないのにな。どうしてもこの人は、僕を二代目にしたいらしい。

職業に人を当てはめちゃいけない気がする。自分の特徴に職業を当てはめないと。枠に自分をはめるのではなく、自分に合いそうな枠を選ぶという方向性。そっちのほうが自然な考えだと思うんだ。

親って全部自分の思い通りに子どもが行動すると信じているのかね。自分の子どもだと言ったとて、所詮は赤の他人なんだよ。意志を尊重してもらえないかな。頭の堅い親には手を焼くなあ。やれやれ。


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。