私だけかと思っていました。日本とニュージーランドの形が似ているなと密かに思っていたこと、夏目漱石では『こころ』が好きで高校時代に『それから』が難しくて読めなかったのは。

純文学の中で、当時一番インパクトとして心象に残ったのは、室生犀星『或る少女の死まで』でした。詩人が描く小説の美しさに眩暈がしました。

大学院の教授が「小説を読め小説を読め」と口酸っぱく言ってました。対人支援とはつまり他人の自分とは違う生き方や価値観に交わることで、小説を読んで主人公や登場人物に想いを寄せる行為がよいトレーニングになるというのです。高校の勉学についていけなくなり、逃げて純文学を読み漁った経験が今頃になって役に立っています。人生には無駄がないんですね。

「夜を乗り越える」又吉直樹著

近代文学は「こんなことを思っているのは俺だけだ」という気持ちを、次々と砕いていってくれました。

社会の時間は地図帳を眺めていました。日本とニュージーランドの形が似ているので、何か関係があるはずだと真剣に考えていました。典型的なアホです。

「何もない」という武器。実はそれが一番強い。

本の中に答えはない。答えは自分の中にしかない。

自分が信じるものを信じるようにやるだけだ。

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cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。