「マッチング仮説(釣り合い仮説)」に則れば、似た者同士はくっつきやすい、といえます。
マッチング仮説とはアメリカの心理学者バーシャイドらが提唱した理論で、人は身体的魅力が同程度の相手を、無意識のうちに選ぶ傾向があるというものです。この現象が起こる理由は、人は美しい異性に惹かれる一方で同時に拒絶される恐怖も覚えるからと説明されています。「夫婦はいとこほど似る」なんて諺がありますが、似てくるのか、似ているから一緒になったのか、どちらなのでしょうね。
そうは言っても、街中を見渡すと、贔屓目に見ても、身体的魅力が釣り合っていないカップルだっています。これはどういうことなのでしょう。
バーシャイドらは、同程度という尺度は本人の主観であり、周囲からの客観的評価ではないと唱えています。客観的には容姿がそれほどよくなくても主観的な自己評価が高い人は、客観的には自分よりも優れた美人(本人的には同程度だと思っている)を選んでいるというわけです。
また、「類似性の法則」からいえば、似ていて共感を覚えるのは外見だけではなく、育った環境・学歴・価値観・宗教観・娯楽や態度なども対象になります。似た部分をより多く持つ者同士は内集団となり凝集性が高まる、というわけです。外見が不釣り合いなカップルは、実は中身の方で釣り合っているのかもしれません。
内集団については過去記事でどうぞ。
https://note.com/embed/notes/n76637a602d74
この「マッチング仮説」「類似性の法則」は、初対面コミュニケーションでお互いの距離感をグッと縮めたい時に役立ちます。「ミラーリング」です。ミラーリングとは、意識して相手の行動や声などを鏡に映すように似せる技法です。例えば、相手が足を組んだら自分も足を組む、相手の話すスピードやテンポで自分も話すなどです。効果が発揮された場合は、短時間で親交が深まるはずです。ただし、露骨に真似して気がつかれると逆効果、相手を不愉快にさせてしまう可能性もあります。さりげなく自然に行えるかどうかがポイントですね。
好かれたいがために「マッチング仮説」「類似性の法則」「ミラーリング」を意図的に使う印象操作は、瞬間的な親近感の醸成には向いていますが、持続には不向きです。相手に合わせ自分の意思を欺き続けると認知的不協和がどんどん大きくなり、いずれ破綻します。策士策に溺れないように覚えておきましょう。
参考:「面白いほどよくわかる!見ため・口ぐせの心理学」渋谷昌三著(西東社)