「燃えたよ…まっ白に…燃えつきた…まっ白な灰に……。」(矢吹丈)

燃え尽き症候群(以下、別名であるバーンアウト)とは、今まで熱心に仕事に取り組んでいた人が、あたかも燃え尽きたかのように意欲をなくし、社会的に適応できなくなってしまう状態をいいます。

精神疾患には分類されていませんが、ストレスとの関連が示唆される疾患です。元々は医療や福祉、教師などの対人サービス業に従事する人に多いとされてきましたが、現在では様々な職種・業種にみられます。スポーツ分野でも、オーバートレーニング症候群など、慢性疲労状態との密接な関係が指摘されています。

仕事などに献身的に打ち込んだものの、期待した結果が得られないことにより生じると考えられています。心身の疲労の蓄積や徒労感により、無気力・意欲減退・抑うつ・思考力低下などの症状が現れます。バーンアウトに陥りやすい人の特性として、ひたむきに他人との深い関わりを保ちながら仕事を熱心に続けている人が挙げられます。ひたむきに働く人は、成果や目標達成のために愚直に仕事に取り組みますが、できなかった場合に深く悩みやすい傾向があります。仕事の仕方がまだ掴めていない新社会人にも当てはまるでしょう。

達成感は蜜の味です。目標を達成すると評価されるので、自分の存在がそこで認められたと錯覚します。目標なんて達成しようがしまいが、本当はそこに居るだけ生きているだけで存在価値があるのに、人はどうしても目に見える判りやすい物証を求めてしまいます。

Mr.Childrenは言います。確かに目標は、高ければ高い壁のほうが登った時気持ちいいもんです。でも、目標→達成→更に高い目標→達成→更に更に…、無限ループの終わりなき旅にならないよう気をつけなければいけません。

例えば「自分の外側で設定される目標以外に、自分の中での目標をつくる(←以下の過去コラムもどうぞ)」「仕事以外の熱中できるものを探しておく」「のめり込みやすい自分の性格を受容し自戒する」などがあるといいですね。

目標達成することだけが仕事ではない、ですよ。

https://note.com/embed/notes/ncff0a32878b4

※ ※ ※

私自身はバーンアウトの経験はありません。いつもどこか冷めてる感じで熱中しにくい性格が幸いしているのかもしれません。10代の頃はそんな自分に劣等感を感じていましたが、性格なんて何が良くて何が悪いかなんてないんでしょうね。

張り詰めすぎた長い糸を一気に弛緩すると、改めて張るまでに莫大な時間とエネルギーが必要です。「立て、立つんだジョー!」と言われても立てないもんです。程よくやる柔軟さと息抜きの術を身につけておきたいものです。

参照:
厚生労働省 e-ヘルスネット https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-047.html
ラフールサーベイ https://survey.lafool.jp/mindfulness/column/0099.html
「公認心理師完全合格テキスト」公認心理師試験対策研究会(2022)


cocoro no cacari|大塚紀廣

1976年千葉県生まれ。大学卒業後、第二新卒で(株)リクルートに入社、国内旅行情報じゃらんを担当した。その後同グループであった(株)ゆこゆこへ籍を移し、人事部で人材採用、社員研修の企画運営、ストレスチェック実行者等を担当した。40歳で退社し、臨床心理学大学院へ進学。修了後は東京大学医学部付属病院老年病科、都内のメンタルクリニック等で心理士業務に就き、現在に至る。専門は高齢者臨床と産業心理。趣味はロードバイク、サッカー、ジェフ千葉、漫画、温泉など。